長谷川博己さんと綾瀬はるかさんの初共演は、2013年のNHK大河ドラマ『八重の桜』だった。あれからおよそ9年というときを経て、ふたりは映画『はい、泳げません』で再び顔を合わせることになる。

 本作にて、長谷川さんは水に顔をつけることもできないが泳ぎたいと切実に願い、一念発起する哲学者・小鳥遊雄司(たかなしゆうじ)を、綾瀬さんはそんな小鳥遊に泳ぎを教えるが実は不器用なコーチ・薄原静香をそれぞれ演じた。乗り越えられない過去に蓋をして生きてきた両者が、プールでの時間と交わりを通して見せる変化が、大人の心に刺さる物語となっている。

 インタビューでは、信頼のおける俳優同士が再びタッグを組めるという表現者としての喜びが垣間見えた。と同時に、カメラを離れたところでも交流があるふたりの素のキュートなやり取りまで、お届けしたい。


プールでの撮影は、部活みたいで面白かった

――『はい、泳げません』でのおふたりの共演シーンはプールがメインです。小鳥遊を演じた長谷川さんは泳げない演技が真に迫っていました。撮影はいかがでしたか?

長谷川 プールの底に沈んだ状態で演技をするのですが、できるだけ長く沈むためには、息を吐き切らなきゃいけないんですよ。吐き切ってから潜るけど、苦しくて(笑)。もうちょっと長く潜っていたいのに、息を吸いたくてしょうがないから、そこが本当に大変でした。

綾瀬 おもりもつけていましたよね?

長谷川 そう、おもりもつけた! 長い時間プールに入ったり、上がったりすると体温も奪われますし。はるかちゃんは、お風呂みたいな桶に入っていたよね?

綾瀬 そうです。サウナや採暖室に入ると顔が赤くなっちゃってメイクさんが大変そうなので、桶のお湯にじっと浸かっていました。

長谷川 「寒くないですか?」と聞かれても「全然大丈夫です!」と頑張っていたから、さすがだよね。

――綾瀬さんは泳ぎのプロ・薄原を演じているわけで、そのあたりはいかがでしたか?スポーツ万能のイメージも強いですが。

綾瀬 これまであまり水中で撮影することがなかったので、何だか部活みたいな感じがありました。それがすごく面白かったです。

長谷川 彼女はすごいですよ。撮影が終わってヘロヘロでも「ちょっとこのシーンのフォームを見てください」とコーチのところで練習するから。

綾瀬 違うんですよー! クロールだけでいいはずだったのに、監督から「エンディングで4種目を撮りたいから、4種目練習して」と急に言われて!「私、バタフライなんてやったこともないんですけど……」みたいな感じになり、やむを得ず練習したんです。でも、エンディングでほとんど使われていなかった(笑)。

長谷川 そうだね(笑)。

2022.06.12(日)
文=赤山恭子
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=須賀元子【長谷川】、中野明海【綾瀬】
スタイリスト=大久保篤志(ザ スタイリスト ジャパン®)【長谷川】、椎名直子【綾瀬】