俳優は、自分の苦い体験を思い出す仕事でもある
――本作では小鳥遊も薄原も、自身のトラウマと向き合う過程が描かれています。演じるにあたって、ご自身の喪失感だったり経験と重ね合わせたりもしましたか?
長谷川 僕は結構しました。……というか、役とそこを結びつけるしかなくて。例えば、親族や友人との死別みたいなものは、いつか誰もが経験するわけじゃないですか。それに重なるところがあったので、自分の記憶と向き合いながら、思い出しながら小鳥遊はやっていたところもあります。
そういう意味では、俳優という仕事自体が、自分の過去の体験に戻っていかなければいけない職業だと思います。あまり思い出したくないことでも、そのときの感覚や感情を引き出したりしますし、さらにそれを表現するのはとても勇気のいることだし、怖いことなんです。けど、それをやってうまくいくと、少しだけ開放される感覚になるんですよね。小鳥遊もそういうところが同じだなと思っています。
綾瀬 私は静香コーチのような経験は具体的にはないんですけど、気分が鬱々とすることはあります。そういうときに身体を動かす行為はやっぱり気分転換になったり、ちょっと前向きに切り替えるスイッチになったりするものだと感じるんです。
私は昔からお散歩をするのが好きなんですね。今思うと、歩いている最中に自分の頭を整理していることがすごく多くて。歩いているとだんだん気分がよくなるし、歩くことは前に進む行為だし、全身運動だし、身体と心がつながって余分な思考を排除していけるのかな、と思います。
2022.06.12(日)
文=赤山恭子
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=須賀元子【長谷川】、中野明海【綾瀬】
スタイリスト=大久保篤志(ザ スタイリスト ジャパン®)【長谷川】、椎名直子【綾瀬】