オダギリジョーにとっての“ものづくり”とは

 俳優・映画監督・ミュージシャン……。様々な表現形態を持ち、自分の“色”を披露してきたオダギリジョー。脚本・演出・編集・出演を手掛けるドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』の新作も控える彼が、次世代の監督・キャストたちと組んだ『ぜんぶ、ボクのせい』が2022年8月11日(木)に劇場公開を迎える。

 児童養護施設で暮らす13歳の少年、優太(白鳥晴都)。どこにも居場所を見出せない彼は、母・梨花(松本まりか)の居場所を知り会いに行くが、「施設へ戻ってほしい」と頼まれてしまう。連れ戻そうとやってきた施設の職員を振り切って駆けだした優太は、軽トラで暮らす男・坂本(オダギリジョー)と出会う。初めて自分を受け入れてくれる存在に触れた優太は、坂本と寝食を共にし、慕うようになっていくのだが……。

 不寛容な社会の表情を切り取り、鋭い批評性を持って見つめた本作で、オダギリが示したのは人間味。その温もりは、ユーモアをもってものづくりに向かう彼自身の姿勢にも通じる。“遊び”がなくなっていく社会で、どう遊んでいくのか――。オダギリジョーの創作論を前後篇に分けて掲載する。

【後篇を読む】ワガママにものを作る人がやっぱり必要 様々なキャリアを経てたどり着いたオダギリジョーにとっての創作論

――本作は全体的にシリアスな雰囲気が漂っていますが、オダギリさんが要所に“抜きどころ”を作ってくれていると感じました。

 最初からそういうつもりで現場に入ったというより、結果的にそうなった感じかとは思います。

 脚本を読んだ段階だと、文字だからこそ余計にシリアスな印象を受けて。その中で坂本というキャラクターをどういうものにしていくべきか考えたり、松本優作監督と話したりしていくなかで、ああいった形に落ち着いていきました。

 この映画は、優太(白鳥晴都)が今までにない価値観を持った大人(坂本)と接しながら成長していく作品でもあるので、そんな大人をどう魅力的に描けるかが重要だと思ったんです。そのために、共感できる部分を作ったり、笑えるような部分を入れたりすることが必要だと感じたんでしょうね。

――抜け感、或いは“遊び”の意識といいますか……。

 そうですね。ただ確かに、僕もはっきりとは覚えていないのですが、映像を観る限り「即興でやってるのか?」というところが多いんです。即興でやるとやっぱり抜け感は出ますから、それを狙ってた節はありますね……。例えば、坂本が優太をけしかけて人にぶつからせて「時計が壊れた」といちゃもんを付けるシーンなどは、即興だった気がします。長回しの一発撮りで終わった記憶があるんですよね。

 その辺りは、松本監督の勇気でもあると感じます。ほぼ初めての大きな勝負でこういう撮り方をするとは、若いのにすごい挑戦心がありますよね。

2022.08.10(水)
文=SYO
撮影=平松市聖
ヘアメイク=砂原由弥
スタイリスト=西村哲也