監督や共演者が下世代の現場で工夫していたこと

――『ぜんぶ、ボクのせい』は監督やキャスト等々、オダギリさんにとって下の世代の方々が中心になって作り上げた作品です。それは希望でもあるのかなと感じました。

 そうですね。オリジナル脚本で、松本監督も商業映画一本目でこういった作品を撮ることができて恵まれていると思うし、この先もいいオリジナルを作っていってほしい。おっしゃる通り、希望は持っちゃいますね。

――監督や共演者が下世代である本作の現場で、コミュニケーション等で工夫されたことはありますか?

 地方に泊まりがけで1ヶ月くらいの撮影だったので、基本的に毎日一緒にご飯を食べていました。コロナ期間だからそんなに大人数ではいけなかったし離れて座っていましたが、白鳥くんや川島鈴遥さん、衣装部やメイク部といった撮影が一緒に終わるチームや監督を含めてご飯に行ったり、ケータリングも入れたりしていました。

 食事の場で何を話したのかはあんまり覚えていないのですが、プレスシート(※マスコミ用に制作されるパンフレット)を読むと俳優としての心得を伝えていたらしくて(笑)。たぶん、どうでもいい話をしていたんだと思います(苦笑)。距離は縮まったほうがいいと思っていたので、なるべく自分からコミュニケーションを取るようにはしていました。

――そういったコミュニケーションは現場によって意識的に変えていらっしゃるのでしょうか。

 そうですね。芝居の経験が少ない若い方たちとの現場だったのでそういった距離感を取りましたが、他の現場では僕はそんなにコミュニケーションを取らないタイプなので、作品や現場によって変えています。

――以前、出演作と監督作では全く違う、とおっしゃっていましたね。

 監督のときは自分でも考えられないくらい丁寧だと思います。相手が誰であっても、とにかく下から行っています(笑)。

 実際にそう思っているからこそですが、参加していただいているという感覚で接しています。自分が書いた脚本を形にするために集まってくれている人たちなので、少しでも楽しいと思ってほしいし、この作品に関われてよかったと感じてもらい、できるだけ良い気持ちで帰ってほしいですから。

 『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』だと監督としてバタバタしているので、現場で和ませたりはなかなかできていないかなと思いますが、俳優チームがみんな楽しそうにやってくれて、雰囲気を引っ張り上げてくれている気はします。スタッフもそれで乗れるし、そういった部分に助けられています。

» 【後篇につづく】ワガママにものを作る人がやっぱり必要 様々なキャリアを経てたどり着いたオダギリジョーにとっての創作論

オダギリジョー

俳優。1976年2月16日生まれ。岡山県出身。『アカルイミライ』(’03年)で映画初主演を飾り、以降第一線で活躍を続ける。初長編監督作『ある船頭の話』はヴェネチア国際映画祭他で、高い評価を得る。近年の主な出演作は映画『アジアの天使』、『大怪獣のあとしまつ』、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』など。2021年にはNHK連続ドラマ『オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ』で脚本、演出、編集、出演を手がけた。2022年には続編が放送される。

『ぜんぶ、ボクのせい』

2022年8月11日(木・祝)より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

白鳥晴都 川島鈴遥
松本まりか 若葉竜也 仲野太賀 片岡礼子 木竜麻生 駿河太郎/オダギリジョー

【STAFF】
監督・脚本:松本優作
エンディング・テーマ:大滝詠一「夢で逢えたら」(NIAGARA RECORDS)
製作・プロデューサー:甲斐真樹 製作:藤本款 定井勇二 前信介 鈴木仁 水戸部晃
アソシエイトプロデューサー:永井拓郎
ラインプロデューサー:中島裕作
撮影:今井孝博(JSC)
照明:金子康博
録音:髙田伸也
美術:仲前智治
衣裳:篠塚奈美 馬場恭子 ヘアメイク:山井優
音楽プロデューサー:田井モトヨシ 編集:田巻源太
助監督:野本史生 制作担当:中村哲也
スチール:久保田智
製作:スタイルジャム、クロックワークス、ビターズ・エンド、グラスゴー15、ミッドシップ、コンテンツ・ポテンシャル
制作プロダクション:スタイルジャム 宣伝:ミラクルヴォイス 配給:ビターズ・エンド
2022/121分/カラー/日本/5.1ch/ビスタ  PG12
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)|独立行政法人日本芸術文化
振興会
©2022『ぜんぶ、ボクのせい』製作委員会
■公式サイト:https://bitters.co.jp/bokunosei/

2022.08.10(水)
文=SYO
撮影=平松市聖
ヘアメイク=砂原由弥
スタイリスト=西村哲也