初心者でも楽しいフィッシング
実はこの日のアクティビティは、あまり気が進まなかった。フィッシングにはさして興味がなかったことに加え、タイトな撮影スケジュールのなか、けっこう時間がかかるし、ボートで出かけるのですぐには戻って来られないし……。それが、「そろそろ帰る?」と聞かれて、「もう少し!」と答えることになるとは思ってもみなかった。
フィッシングに使う船は、これまで何度も乗ってきたバンカボート。フィリピン特有の船で、船体の両側に翼を広げたかのようなアウトリガー(揺れを防ぐ浮き)が付いている。リゾートのアクティビティに使うバンカボートには、ビニール製の日除けの屋根も付いていて快適だ。
ポイントは、パングラシアン島を出てほんの10分ほどの場所。日帰りビーチツアーで使われるエンタローラ島のすぐ近くだ。ポイントに着くと、すぐに仕掛けの準備が始まった。といっても、テグスの先に餌となるイカの切り身と錘を付けるだけ。
そして、釣り方も簡単。水深は50メートルほどという海中に仕掛けを投げる。錘が底に着いたら少し引き上げてゆらゆら上下させながら魚がかかるのを待ち、アタリが来たら引き上げるだけだ。
教えてもらったとおりに仕掛けを勢いよく投げた。テグスが引っ張られなくなれば錘が海底に着いたということ。そこで少し引き戻して、上下にゆらゆら……。すると、5分もしないうちに何かが当たったような感触が。ひとまず引っ張り上げることにした。
ガイドのスタッフィさんから「釣れたの?」と聞かれたので、「わからないけど、ひとまず上げてみるね」と返しつつテグスを巻き上げると、小さな魚がかかっていた! なんと、地元の本職の皆さんより先に私が釣り上げてしまったのだ!
リゾートを出るまで気が進まなかったのに、1匹釣れた途端に楽しくなった(笑)。スタッフィさんも、負けずに2匹同時に釣り上げた。さすがだ! 結局、全部で6匹釣れたうちの2匹は私の釣果という結果に、ウキウキしながら帰ったのだった。
釣り上げた魚は、リゾートで調理してもらって夕食時に食べてもいいし、船の皆さんに差し上げてもいい。私は後者を選んだ。クルーの皆さんに喜んでもらいたくて。予想外に楽しいアクティビティだった。
Column
CREA Traveller
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2023.10.15(日)
文・撮影=たかせ藍沙