あのときの勘はこのためだったのかも
――固定観念でご自身をがちがちにしない、自分を縛らなかったと。飛び込むと傷つくかもしれないし、怖いかもしれないけれど、やらない理由や言い訳を作らなかったんですね。
「よし、試しに行ってみるわ!」みたいな感覚で行ったので、自分を縛りすぎないことは結構大事だったのかなと思いました。
CREAさんの読者世代は転職を考えられたりする世代かな、と思うんですが、起業してみたり、自分でいろいろやってみたり、全く違うことをしたいとか……そうよぎった時点で、“報せ”がきているという気がします。
私は、自分自身を縛らずに動いてみれば、最後は縁がつないでいってくれると信じていますね。
――お話を伺っていると、ウイカさんは思い立ったらすぐに行動されていますよね。もともと行動力はあるほうなんですか?
いえいえ! 行動力がある方は、もっともっといらっしゃいます。パッと思いつく限り、アンミカさんや若槻千夏さんは、全然寝ていないんじゃないかと思うぐらい、常にいろいろなものを見に行って、動いて、人と会っていらっしゃるんです。そういう方々に比べたら、私は全然だなあと思います……。
私、趣味がゲーセンに行ってクレーンゲームすることしかないんですよ(笑)。なのでバリキャリみたいなこととは程遠いです。行動力は全然ないですし、アクティブでもないですから。いざ岐路に立たされたとき、自分自身をネガティブな感情で縛らないというだけです。
――行動しないほうに勘が働いてよかったなと思うことは、これまでありましたか?
すごく大きな舞台のお仕事をいただいたことがあって。絶対やりたいと思ったんですけど、まったく同じ時期に大きなオーディションがあるとも言われて。当然、オーディションなので受からないとその仕事には就けないわけで……。舞台のお仕事は先方からのオファーで「はい」と言えば出られるので、絶対そのほうがリスクは少ないわけじゃないですか。
でも、私は勘がはたらいて「このオーディションを受けたほうがいい」と思って、舞台をお断りしたんです。オーディションに受かるという自分にベットして。そうしたら……オーディションに落ちてしまって(苦笑)。「舞台を受けておけばよかったかなあ……」なんて思いました。けれども、その後まったく違うすごく大きなオファーが舞台と同じ時期にドン! ときたんです。
そのお仕事は、今までにないくらい大きくて、事務所のみんなが喜んでくれるような内容でした。そのとき「あのときの勘はこのためだったのかも」と。そういった「ん?」という分岐点に立たされたときの選球眼はあるほうかもしれないですね。もちろん全部結果論ですし、他の方が実践してうまくいくかは保証できないのですが……(笑)。
2023.09.07(木)
文=赤山恭子
撮影=今井知佑