津軽塗職人の父娘を通して家族の物語を描いた映画『バカ塗りの娘』。主人公・青木美也子を演じた堀田真由さんに、塗っては研ぐ作業をひたむきに繰り返すことの尊さと、ものづくりの苦しさ・楽しさについてお聞きしました。(インタビュー【前篇】を読む)
――映画『バカ塗りの娘』に出演されたことで、津軽塗や伝統工芸についての認識は変わりましたか?
堀田 江戸時代から伝わる「津軽塗」や、縄文時代から日本にあったといわれる「漆」は、日本が世界に誇れる伝統芸術だと、あらためて強く感じました。近年は仕事で時代劇をやらせていただく機会も多く、日本のよさにふれたいと思っていたので、本当によい機会をいただいたと思っています。
世の中に便利なものや新しいものがどんどん生まれ、インターネットで世界中のものが手に入る時代だからこそ、文化や伝統は大事にしたいと思うようになりました。
――津軽塗のどんなところにとくに魅力を感じますか?
堀田 ひとつのものをつくるのに、これだけの時間とエネルギーをかけるところです。毎日同じことを、常に同じ場所でやり続けるのは、忍耐も精神力もすごく必要だと思いますが、同じ空間で同じ方向を向き、ひとつの「究極」を生み出し続けているところに、唯一無二の津軽塗の強さと美しさを感じます。
――津軽塗の名匠だった美也子の祖父・青木清治が、くじけそうになった美也子に「やり続けること」とアドバイスするシーンも印象的でした。ひとつのことをやり続けるためには何が必要だと思いますか。
堀田 情熱だと思います。それをやりたい、やるんだ、という熱意ですね。おじいちゃんが美也子に「やり続けること」と何度も伝える場面は、私も大好きなシーンです。あれは、津軽塗のことだけを言っているのではなく、美也子の人生を応援し、ひいては観ている人の人生をも応援してくれているように感じています。
――堀田さんが情熱を持って続けていることは何でしょうか。
堀田 私の場合は「お芝居」ですね。お芝居の世界も、広い意味で「ものづくり」です。たくさんの人がかかわってひとつの作品をつくりあげていくお芝居は、情熱がなければやり遂げることはできません。
ただ、お仕事の依頼をいただけることは本当にありがたく楽しい毎日ですが、大変なこともあります。他人や過去の自分と比較して落ち込んだり、つらいと感じたりすることもありながら、情熱を絶やさず続けています。
楽しいことと苦しいことって、絶対裏表だと思うんですよ。続けることは確かに大変ですが、それでも、続けることで見えてくる景色もあります。それに、続ける努力は、きっと新しい何かを生むと信じているので、これからもお芝居を続けていきたいと思っています。
2023.08.30(水)
文=相澤洋美
撮影=杉山拓也
スタイリスト=小林 新(UM)
ヘアメイク=小笹 博美