ドラマ『ゆとりですがなにか』や『大豆田とわ子と三人の元夫』などで、抜群のコメディセンスを発揮してきた俳優の岡田将生さん。最新映画『1秒先の彼』では、少々口の悪い郵便局員のハジメをとびきりキュートに演じている。
舞台は京都。何をするにも1テンポ早いハジメと、何をするにも1テンポ遅い大学生のレイカ(清原果耶)の物語。ある日ハジメの大切な1日が忽然と消え、謎だらけのできごとにどうやらレイカが関わっているらしいことが明らかになる。
原作は2020年に台湾アカデミー賞を最多受賞した『1秒先の彼女』(チェン・ユーシュン監督)。この作品に惚れ込んだ山下敦弘監督がリメイク。男女のキャラクター設定を逆にし、脚本は宮藤官九郎さんが担当した。
山下監督は、岡田さんがデビュー間もないころに出演した映画『天然コケッコー』でメガホンをとっており、宮藤さんは岡田さんの人気をさらに高めたドラマ『ゆとりですがなにか』の脚本家。縁の深いお二人との仕事、最新作について語ってもらった。
1秒先を行く主人公。会話のテンポを意識して
――山下敦弘監督作品の出演は、『天然コケッコー』以来、16年ぶりだそうですね。
本当に感慨深いです。あんなに緊張する現場はなかなかないというくらい緊張しました(笑)。成長した姿を見せたい、というわけではありませんが、監督にがっかりされたくないという気持ちもあり、一俳優として真摯に向き合おうとして、ひとつひとつの言葉を選びながら会話をしていたら、ますます緊張して(笑)。
でも、こうしてお声をかけていただいて、しかも、宮藤官九郎さんの脚本だったというのもすごく嬉しかったです。
――ハジメ役に関して、監督と事前にお話しはされたのですか。
実は撮影に入る前に、ハジメが好きになる桜子役のオーディションの場にハジメくん役として呼ばれて、そのときに監督から少し演出を受けたんです。会話のテンポや、相手よりも1テンポ先に話してしまうタイミングなどを試す時間があって。そこでのお芝居が本当に楽しくて、ハジメくんの新たな面が生まれてくるようでした。撮影ではそのときの体験が生きた気がします。
――原作の台湾の『1秒先の彼女』はご覧になったのですか?
はい。設定は奇抜なところもありますけど、映画的な要素が詰まっているすばらしい脚本で感動しました。映像も美しくて、ロケ地巡りツアーがあったら、行ってみたいくらい。リメイク版は男女を反転させると知らなかったので、僕は男性のほうを中心に観ていて、あとからそのことを聞いてびっくりしました(笑)。
20代のころは少しひねくれていて、恋愛映画を観てこなかったせいか、30代で観ると主人公二人の純粋な思いにうるっときてしまいます。
2023.07.07(金)
文=黒瀬朋子
写真=榎本麻美
スタイリスト=小林麗子
ヘアメイク=大石裕介
衣装協力:NEEDLES(ジャケット、シャツ、パンツ、ミュール)