キャラの濃い共演者の皆さんに助けられた

――ハジメは「洛中以外は京都じゃない!」と言うようなこだわりの強い京都人。そんなハジメも次第に変わっていくところにグッときました。

 『1秒先の彼』は、ハジメくんが成長する物語でもありますよね。踏み出せなかった人生の一歩が描かれているところも素敵だなと思います。

 宮藤さんの脚本は、人間の多面的なところが見られます。読んでいても、キャラクターのいろんな表情が浮かんでくる。そこがすごいなと思いますし、宮藤さんの頭のなかはどうなっているのだろうといつも思います。

――郵便局の同僚役の、伊勢志摩さんや松本妃代さんとのやりとりや、ハジメが同居しているガングロギャルの妹(片山友希)とその彼(しみけん)とのシーンなど、宮藤脚本らしい、わちゃわちゃした会話が面白く、たくさん笑いました。

 (演技の)やりすぎには注意しようと頭の隅で思っていたのですが、やりすぎたかな? と思ったカットが実際には使われていたりしていました(笑)。でも、完成した作品を2時間通して観ると、いいバランスなんですよね。

 ハジメくんがテンション高くしている場面でも、周囲の俳優のみなさんが丁寧に芝居を受けてくださったので、浮かずにすみました。本当に助けていただいたなと思います。

――みなさん、すごく楽しそうに演じておられるように見えました。

 楽しかったです! しみけんさんは、こういう映画の撮影は今回が初めてだったそうで、とても緊張されていたんです。でも、一生懸命シーンのことを考えて、どのように演じたらいいか、僕たちにも意見を聞いてくださいました。とても丁寧ですごく品がある方で、片山さんと3人で「ここは弾けましょう」と、みんなで気持ちを合わせてやることができました。

 そんなふうに純粋に映画に取り組むしみけんさんを見て、そういう姿勢を忘れていたなと反省しました。撮影のいろいろなことがわかってくると、撮られることを前提に演技を頭で考えてしまいます。あんなふうに純粋に撮影を楽しんでおられるのは本当に素敵だなって思いました。

2023.07.07(金)
文=黒瀬朋子
写真=榎本麻美
スタイリスト=小林麗子
ヘアメイク=大石裕介
衣装協力:NEEDLES(ジャケット、シャツ、パンツ、ミュール)