自分が演じるキャラクターを肯定的に捉えている

――ハジメのように口の悪い青年役も、『ドライブ・マイ・カー』の高槻のような冷たい役も、岡田さんが演じられると、すべてに共感できるわけではないけれど、「そういう人」として自然に納得させられてしまう気がします。癖のある人物がただの嫌な人にならないのは、何を思って、演じているからでしょうか?

 基本的にキャラクターに関しては全て、自分のなかでは肯定的に捉えているんです。その人にはその人なりの正義があって行動をしている。ハジメくんもちょっと欠けているところがあるだけで、他の人となんら変わらない。それの何がいけないんだろう? と思っています。

 『ドライブ・マイ・カー』の高槻も、俳優として悩んでいる姿は僕もすごく共感できたし、起こした行いは絶対に許されないことですが、彼にとってはやむを得ないことと捉えていました。捉え方が間違っていたら監督が指摘してくださるでしょうから、言われない限りはそのスタンスでいます。

 『大豆田とわ子~』の慎森も、みんなに変わっていると言われていたけれど、「何が?」と思っていました(笑)。

――全面的に、役のキャラクターの味方なんですね。

 そうです、そうです。「僕からすると、あなたのほうが変なんだけど?」という気持ちです。そのほうがキャラクターの個性が生きてくるというか、面白くなっていくような気がします。

――『悪人』のヒール役も衝撃的でしたが、あのときもそうだったんですか?

 当時はまだ20~21歳だったので、無我夢中で、当たって砕けろ的な感じでやっていたと思いますが、ここ数年はそんなふうに役を捉えていますね。

――岡田さんご自身が基本的に、人にはそれぞれ事情があり、多様な考え方があるということを認めているから、どんなキャラクターも肯定できるんですね!

 その人の背景は誰にもわからないですからね。その人なりの正義があると考えれば、ぶつかってしまうのはその人のことを知らないだけ、知ろうとしないだけじゃないかというふうに思います。

――そんなふうに器を大きく広げたいと思います!

 いやいや、僕自身も実生活でできているわけではないですから(笑)。

岡田将生(おかだ・まさき)

1989年生まれ、東京都出身。2006年デビュー。10年に『告白』、『悪人』にて日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。最近の主な出演ドラマに、『ゆとりですがなにか』(16年NTV)、『大豆田とわ子と三人の元夫』(21年 KTV・CX)、『ザ・トラベルナース』(22年 EX)、映画に『ドライブ・マイ・カー』、『CUBE 一度入ったら、最後』、『聖地X』(ともに21年)など。『ゆとりですがなにか インターナショナル』が10月13日に公開。ナレーションを務める「SWITCHインタビュー達人達」(NHK Eテレ)が毎週金曜21時30分〜放送中。

映画『1秒先の彼』
2023年7月7日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか 全国ロードショー

ハジメ(岡田将生)は、子供の頃から人よりワンテンポ早く、毎朝目覚ましが鳴る前に起床するなど、常に1秒先を生きている。京都市内の郵便局に勤める日々のなか、路上ミュージシャンの桜子(福室莉音)に一目惚れ。一緒に花火大会に行くことになったが、その1日がなぜか消えてしまう。いっぽう、レイカ(清原果耶)はワンテンポ遅いのんびり屋。ある日、バスに追突した高校生を看護するハジメを見て過去を思い出し、彼に近づこうとするが……。
https://bitters.co.jp/ichi-kare

2023.07.07(金)
文=黒瀬朋子
写真=榎本麻美
スタイリスト=小林麗子
ヘアメイク=大石裕介
衣装協力:NEEDLES(ジャケット、シャツ、パンツ、ミュール)