大森立嗣監督によるデビュー作『MOTHER マザー』の公開から3年、同作で日本アカデミー賞新人賞を受賞した奥平大兼さんは、注目度の高さにおごることも気負うこともなく、日々を豊かに生きている。
出演作を重ねる今だが、本人曰く「“うわ、忙しい~寝れねぇ!”とか言ってもなんだかんだそれも楽しんでいるんです」と、くしゃっとした笑みを見せた。
最新出演作は、森七菜さんとW主演を務めた『君は放課後インソムニア』で、不眠症に悩まされる高校生男女の物語。同じ悩みを抱えていたふたりは意気投合し、休部中の天文部を復活させるため奮闘、次第に絆を強めていく。
オジロマコトさんによる原作の舞台でもある石川県七尾市で撮影が行われた『君ソム』では、スクリーンの中で何度も満天の星空が輝く。「もう1回行きたい、リアルな青春を体験できたんです」と愛おしそうにインタビューで話した奥平さん。現在19歳、20歳までのカウントダウンを迎える今のありのままの気持ちも、ナチュラルに明かしてくれた。
森さんがいたから丸太の輪郭が見えてきた
――『君ソム』で奥平さんが演じた中見丸太(なかみ・がんた)は、不眠によるイライラが原因で、クラスメイトたちと距離を取っているような高校生でした。演じてみて、いかがでしたか?
最初、丸太のことは本当にわかりませんでした(苦笑)。僕はこれまで不眠症になったことがないですし、その原因となる家庭環境も違うし、人にイライラすることもあまりなくて。分からない感覚だったけど適当に演じたくはなかったので、監督とよく話し合って、普段から丸太について考えながら生活していました。
演じながら思っていたことは、やっぱり森さん演じる伊咲(いさき)がいるからこそ「丸太」という存在の輪郭が見えてくるのかなと。伊咲がいないと丸太は成長しないので、伊咲がやったことに対して敏感に反応するようにしました。それと同時に、伊咲の魅力を丸太を通して見せていけたらいいなとも思っていたんです。
2023.06.22(木)
文=赤山恭子
撮影=深野未季
スタイリスト:伊藤省吾 (sitor)