田島列島の同名コミックを映画化した『水は海に向かって流れる』で、広瀬すず演じるヒロイン・榊に淡い思いを寄せる高校生・直達を演じた大西利空。生後5カ月で芸能界入りし、すでに是枝裕和監督作など多くの現場を経験している期待の17歳が、これまでのキャリアとこれからのことについて語ってくれました。


●5歳のときのドラマ現場での記憶

――生後5カ月で芸能界入りされた大西さんですが、最初はどんな仕事だったのでしょう。その後、幼いながらも記憶している現場は?

 母が子役事務所に入れてくれて、1〜2歳の頃は赤ちゃんモデルをやっていたようです。その頃の記憶は曖昧ですが、5歳のときに初めて出演したドラマ「ドン★キホーテ」からの記憶はあります。松田翔太さんとご一緒したのですが、アパートの一室のセットの中、見慣れない機材がいっぱいあって、大人たちがたくさんいるなと思いました。3人きょうだいの末っ子という設定だったので、ひとりっ子の僕にとっては新鮮で楽しかった思い出があります。

――幼い頃から、読売ジャイアンツのファンということですが、野球選手になりたいという夢はあったのでしょうか?

 東京ドームに巨人VS.ベイスターズ戦を見に行ったことがきっかけで、野球が好きになりました。野球選手に憧れて、小1の頃に「近所のリトルリーグに入りたい」と母に言ったのですが、「お仕事してるからダメ!」と言われてしまって。小4のときに、なんとか入れてもらえたのですが、その頃にはお芝居のお仕事もやっていましたし、現場でいろんな方と出会えることが楽しかったので、この仕事を続けていきたいと思うようになっていました。

――2012年に是枝裕和監督が演出したドラマ「ゴーイング マイ ホーム」では、宮﨑あおいさんの息子役でレギュラー出演されました。

 長野の長期ロケで、諏訪湖の周りで撮影をしていました。みなさんが優しくしてくださいましたし、大西利空ではなく下島大地としてその期間を過ごせたことが、すごく楽しかったんです。撮影が終わって、東京に帰るときには、終わってしまったことが寂しくてずっと泣いていた記憶があります。

●錚々たる面々の幼少期を演じる

――16年の『ぼくのおじさん』では、“ぼく役”で松田龍平さんの相手役を務められます。そのときのハワイロケの思い出も教えてください。

 まだ10歳ぐらいだったので、そこまで役の重大さを気にしていないというか、台本を読んで面白そうな役だなぁぐらいにしか思っていなかったような気がします。アメリカは働く時間が決まっているので、朝8時ぐらいに撮影を始めたら夕方には終わらせなきゃいけないんです。だから、毎日夕方から海やプールで遊んでいました。

――15年の『悼む人』では高良健吾さん、17年の『3月のライオン』では神木隆之介さん、18年の『blank13』では高橋一生さん、19年の『キングダム』では山﨑賢人さんといった主人公の方々の幼少期を演じられています。意識した点はありますか?

 台本を読んで、大人になったときの役の性格を読み取ったりしました。見た目として、ホクロなどを同じ位置にメイクをしたりすることはありますが、性格をその人に近づけるようなことはあまり考えていなかったです。幼少期を演じるときも、そうじゃない役を演じるときも、まずは自分なりに考えて演じるようにしています。山﨑(賢人)さんはドラマ「トドメの接吻」でも幼少期役だったので、二度も演じることができたのが嬉しかったです。

――19年に現在の事務所(トップコート)への移籍を決めた理由は?

 「新しい環境で頑張っていきたい」という気持ちと、「そこで自分の力をどこまで生かせるか」ということを考えたからです。ちょうど小学校を卒業して、中学1年生になるタイミングだったということもあります。

2023.06.09(金)
文=くれい 響
写真=平松市聖
スタイリスト=MASAYA
ヘアメイク=Emiy