●オーディション合格後に、役の大きさを知った最新作
――これまでを振り返り、大西さんにとって転機となった作品は?
『ぼくのおじさん』と同じ時期に、知念侑李さんと内村光良さんの幼少期を演じた『金メダル男』という映画にも出演したんですが、そのときに改めて、「いろんな役を演じて、いろんなところに行くことができるこの仕事は面白い」ということに気づいたんです。だから、そこが僕にとっての転機かもしれません。
――最新出演映画『水は海に向かって流れる』では、約400人の参加者がいたオーディションを勝ち抜かれて、直達役を獲得しました。
オーディション前には、細かいことを教えてもらえず、受かった後に原作を読みました。とても大きな役で、びっくりするとともに嬉しかったです。オーディションではA4用紙に書かれたシーンのセリフ、特に當真(あみ)さんとの学校でのシーンをやりました。
――劇中、直達はシェアハウスで共に暮らすことになる広瀬すずさん演じるミステリアスな榊に対し、次第に淡い思いを抱いていきます。
僕自身は、これまで年上の女性が気になったり、好きになったりすることがなかったんです。気を使ったりするのが苦手なので、どうしても同級生の方が楽な気持ちでいられるかなと思って……。そういう意味でこの役は新鮮でした。特に後半に榊さんとレストランで会話するシーンは、榊さんへの気遣いの表現が大切だったので、印象に残っています。
●憧れの人は舘ひろしさん
――以前、幼少期を演じられたことのある高良健吾さんとの共演はいかがでしたか?
2回目なので、とても嬉しくて、自分から高良さんに「『悼む人』で幼少期やらせてもらいました」と言いに行ったら、「え、めちゃめちゃ大きくなってない?」と驚かれました。あの頃に比べると、身長も伸びていますし、顔つきも全然違いますから(笑)。高良さんとは、この現場でいろいろなお話をさせてもらいました。
――本作はどのようなことを学ばれた現場だったといえますか?
榊さんを前に直達が感情を出して、涙を流すシーンで大きくつまずいてしまったんです。台本を読んだときから、そのシーンの大切さは理解していて、撮影中もそこに向けて頑張っていたのですが、自分自身で重圧をかけすぎてしまったというか、今までの経験ではなかったぐらい、その日はまったく上手くいかなかったんです。高良さんが優しい声をかけてくださり、前田(哲)監督が「明日やろう」と言ってくださって、なんとか翌日に乗り越えることができました。僕にとって貴重な経験ができた現場でした。
――将来の展望や希望を教えてください。また、憧れの先輩はいますか?
多方面で活躍できる俳優になりたいです。明るい性格や暗い性格だったり、面白い役やシリアスな役だったり。あとは映画やドラマなどの映像以外でも、いろいろ挑戦できる俳優にもなりたいです。例えば、舞台にも立ちたいし、大好きなバラエティ番組にもたくさん出演したいです。憧れの人は、「なるようになるさ。」というドラマで共演させていただいた舘ひろしさん。そのとき、僕は7歳ぐらいだったのですが、舘さんは余裕のある大人の男という感じがして、ずっと尊敬しているんです。
大西利空(おおにし・りく)
2006年5月16日生まれ。東京都出身。生後5ケ月で芸能界入り。12年放送のドラマ「ゴーイング マイ ホーム」で初レギュラー出演。『3月のライオン』『キングダム』などで主人公の幼少期を演じ存在感を放つ。「月刊ジャイアンツ」の"YAE(ヤング・アドバイザリー・エディター)"に就任。
映画『水は海に向かって流れる』
2023年6月9日(金)より公開
高校に入学し、通学のため叔父・茂道(高良健吾)の家に居候することになった直達(大西利空)。だが、そこはマンガ家の茂道のほか、会社員の榊(広瀬すず)、女装の占い師・颯(戸塚純貴)、海外を放浪する大学教授・成瀬(生瀬勝久)ら、くせ者ぞろいの住人が集うシェアハウスだった。その後、直達は「恋愛はしない」と宣言する榊に淡い思いを抱くようになる。
https://happinet-phantom.com/mizuumi-movie/
Column
厳選「いい男」大図鑑
映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。
2023.06.09(金)
文=くれい 響
写真=平松市聖
スタイリスト=MASAYA
ヘアメイク=Emiy