SNSから火がついたラブソング「魔法の絨毯」でブレイクしたシンガーソングライター、川崎鷹也。2023年6月16日(金)より公開中の映画『魔女の香水』では主題歌を担当。彼が歩んだサクセスストーリーや今作で初挑戦した演技について語ってくれました。


●野球少年から音楽の道へ

――お父さんがライブバーを経営されているとのことですが、幼い頃の夢は?

 幼稚園の頃はガソリンスタンドの店員で、小学校に入ってからは野球を始めたので、県大会や甲子園に行きたいと思っていました。その後に肘を痛めてしまったこともあり、夢みたいなものは持たなくなっていました。音楽に関してはJポップを聴いて、カラオケに行く程度でした。

――ちなみに、野球少年だったときは、メガネをかけていたんですか?

 そのときは、目が良かったんですよ。今思うとアホみたいな話なんですが、高校に入った頃、授業中だけメガネをかける女子にキュンとしていたんですよ(笑)。それに憧れて、そんなに目が悪くないのにメガネをかけていたら、本当に悪くなりました。

――ミュージシャンを目指すきっかけになったのは、高校3年の文化祭で歌われたときですか?

 文化祭で歌うちょっと前から、今後の進路を考えたときに、歌を歌うことが好きで、音楽で食べていけたら幸せだと思うようになっていたんです。それで文化祭が人前で歌を歌って表現できるチャンスだと思い、HYさんの「366日」とサザンオールスターズさんの「真夏の果実」を歌いました。それが好評だったこともあり、上京して本格的に音楽をやっていこうという自信がつきました。

●「魔法の絨毯」までの長い道のり

――上京後、どのような音楽活動をされたのですか?

 専門学校に通い、バイトをしながら、先輩に紹介してもらった下北沢のライブハウス「ARTIST」で週1ペースぐらいでライブをやっていました。そして、そこのマスターからいろんなライブハウスを紹介してもらい、新宿や渋谷へと広げていったのですが、お客さんは全然いませんでしたね。「何がお客さんに届くのか?」がまったく分からず、気持ちは荒んでいく一方で、売れているミュージシャンは嫌いだし、音楽番組を観ることもイヤでした(笑)。

――そんななか、2018年に「魔法の絨毯」も収録されたアルバム「I believe in you」がインディーズレーベルからリリースされます。

 今の事務所の社長が自分のライブに通ってくれるようになったんですが、そのとき僕の物販(ライブ会場で販売するCDやTシャツなどのグッズ)がひとつもなかったんです。そこで「楽曲がいっぱいあるんだから、CDアルバムを作らない?」という話になりました。「自分の頭の中にあるだけの30曲ぐらいが何かしらの形になるなら……」と思い、リリースに至りました。でも、まったく売れず、在庫ばかりが残っていました(笑)。

――そこから約2年後の20年の8月、TikTokで「魔法の絨毯」が注目され、再生回数は3億回超。YouTube再生回数も 8000万回超という現象が起きます。

 そのときは外資系のIT会社で働いていたんですが、ある日突然、何の予兆もなく、携帯を見るたびにフォロワーが1000人単位で増えていきました。真っ黒な画面に、「もう恋愛なんてコリゴリ」という字幕が出るだけの動画のBGMに使われていたんですが、コメント欄にいろんな人の恋愛の悩みが書かれて、「恋愛相談掲示板」としてバズったんです。BGMに使った人は、僕のライブを見たこともない方でした。そのうちに「この曲良くない?」といったコメントも出るようになり、仲良しカップルの動画に頻繁に使われるようになったんです。

2023.06.23(金)
文=くれい響
写真=平松聖市
ヘアメイク=髙徳洋史(LYON)