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堀田さんがつらいときにすること

――つらいことを乗り切るために、何かしていることはありますか?

堀田 本を読みます。つらいことに遭遇すると、現実逃避したくなるので、そんな時は本を読んで、違う世界に逃避することにしています。とくに、エッセイや小説が好きなんですけど、作者とは国籍も年齢も違うのにシンパシーを感じる作品に出合うと、世界のどこかに自分と同じようにがんばっている人がいるんだな、と勇気がわいてきます。

――昔から本はお好きだったのですか? 最近はどのような本をお読みになったのかも教えてください。

堀田 よく読むようになったのは、仕事を始めてからですね。本を読むと、他人の感情や表現を知ることができ、芝居の勉強にもなるので、いまは時間ができた時に本を読むことが習慣化しました。

 すごく落ち込んでいた時に書店で見た、韓国の作家イ・ギジュさんの『言葉の温度』(光文社刊)というエッセイ本はとてもよかったです。「言葉に温度なんてあるのかな?」とタイトルに惹かれて読み始めたのですが、読んだら面白くてハマりました。私は日頃から言葉をすごく気にするところがあるので、言葉への愛が詰まったこのエッセイに出合って、救われました。

 書店に行くのも好きですね。ジャケットで買う方もいらっしゃるそうですが、私はたいてい、タイトルで買ってしまいます。

――映画『バカ塗りの娘』の原作『ジャパン・ディグニティ』(髙森美由紀著、産業編集センター刊)もお読みになりましたか?

堀田 今回は意図的に原作を読みませんでした。台本をいただいた時に、とにかく津軽弁が全然わからなくて、自分が演じる美也子の気持ちがなかなか入ってこなかったんです。

 だから、原作を読んで予習していくことはせず、「まっさらな状態で美也子に会いに行こう。そして、美也子として弘前での生活を楽しもう」と、あえて事前情報を入れずに撮影に臨みました。計算しなかった分、小林 薫さん演じる漆塗り職人の父との、ぎこちない父娘の距離感や温度感が素直に伝えられたのではないかと思います。

2023.08.30(水)
文=相澤洋美
撮影=杉山拓也
スタイリスト=小林 新(UM)
ヘアメイク=小笹 博美