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アイルランドの東端でお寿司を食べる

 いつまでも陽が高い白夜のシーズンは夕飯を食べ損なう危険がつきまとう。日が高くても閉店時間は変わらない。気がつくといつも20時近くになっていて、「近くのレストランを探して」と携帯に向かってお願いする毎日であった。

 唯一日本から目指したレストランは島の東端に位置する「Nord Austur Sushi and Bar」。

 地元で採れた魚介類を使って美味しいと評判も良く、インスタの写真にもそそられた。何より、こんな北の地で食べるお寿司ってどんなものか興味あるでしょ。

 アイスランドに入っても連絡取れず半ば諦めていたら当日やっと繋がった。しかも21時過ぎても入れてくれるらしい。

 そのレストランは港にポツンとあった。

 暖簾をくぐり、2階に上がっていくと素朴な作り緑と青の内装で可愛らしい。

 少し赤らんだ空も美しく待ち時間もいい気分。

 まずはししゃもフリット。水揚げしたばかりで新鮮。衣も軽く、苦味がいい。添えられているポン酢につけてもビールに合う。

 レモンの利かせ方も絶妙で、ペルー育ちの夫も満足。

 握りは今回は挑戦せず巻物でいくことに。

 鯖の押し寿司にはなんと白板昆布がのせてある。芸が細かい!

 そしてサーモンとアボガドのロール寿司。これにはアイスランド特産の手長海老の天ぷらがのせてあって一緒に頬張るとなんともいいバランス。

 最後には「日本から来たの?」とシェフ登場。聞けば北海道で修行されたとか。至極納得。サービスはブラジル育ちで海外を転々としているフランス人。この島は外国人の季節労働者がたくさんいるのも特徴的だ。

 このお店も夏しか営業しておらず、我々が行った前日からオープンしたそう。周りのお客さんたちはほとんど地元の方で、器用に箸を使い美味しそうに頬張っている。

 海外で食べる日本食としてはかなりのレベル。しかもこんなに遠く離れた島でいただけるとは。旅のなか日に癒され後半への士気も上がった。

2023.08.29(火)
文・撮影=大坪千夏