●アクションや乗馬などに挑戦した初主演映画
――22年には、ドラマ『未来への10カウント』に出演。「俺スカ」と同じ学園ドラマですが、今度は木村拓哉さんがコーチを務めるボクシング部の部員でした。
本当に部活みたいな現場で、撮影前のトレーニングから全力でやりました。パンチを打つだけでも、身体が上下に動いてしまう自分のクセを消すのが難しかったのですが、ほかのキャストのみなさんが上達していくのを見ながら、「自分も負けていられないな」という気持ちで練習に臨んでいました。右胸がどんどん厚くなりましたね(笑)。今でも家でシャドー(ボクシング)をしたり、筋トレしたりしています。
――そして、ヴィクトル・ユーゴー原作のダーク・ファンタジーを映画化した『美男ペコパンと悪魔』に主演。劇中では、中世のヨーロッパで冒険の旅に出る主人公ペコパンと、現代日本で昏睡状態に陥る高校生・隼人の二役を演じています。
原作は知らなかったのですが、その世界観にとても驚きました。タイトルが可愛らしいうえに、原作にはない僕と(共演の)下尾みうちゃんがカップルの現代パートもあって、どんな作品になるのか、とても気になりました。
アクションや乗馬など、今までなかなか触れられなかった新しいことにチャレンジでき、めちゃくちゃ勉強になりました。
ただ、乗馬に関しては、馬が優秀すぎて、むしろ僕が乗せてもらっている感じでした(笑)。現代パートは、どちらかというと等身大な感じで演じました。
――異形の怪物(クリーチャー)を相手に戦うバトルシーンはいかがでしたか?
現代パートを先にまとめて撮って、その後に中世のパートを撮ったのですが、やはり見えない敵、特にカブトムシ人間の「タレブ」と戦うのは大変でした。しかも、猛暑のなか、毎日夕方から明け方にかけて撮ったのですが、なかなか過酷で、僕のリアルな表情が撮れているんじゃないかと。また、戦っているときの吐息などを後でアフレコ収録したことで、かなり臨場感があって迫力あるシーンになったと思います。青銅の巨人「ニムロデ」など、クオリティの高いCGクリーチャーも見てほしいです。
●憧れはドラマ共演した木村拓哉
――本作はどんな新しい阿久津さんが観られる作品になったと思いますか?
ワイヤーアクションでの身体の使い方や動き方も学ぶことができましたし、いろいろと頑張りました。あとは、ペコパンの衣装や髪形に助けられた部分はあると思いますが、今まで以上に男らしくてクールな表情をしているので、いつも応援してくださるファンの方が観たら、かなり新鮮に感じられるかなと思います。
――今後の希望や展望を教えてください。
今までは2.5次元の舞台だったり、年齢的なものもあったりして、学生役が多かったので、今後は映像のお芝居で、もうちょっと大人な役柄も演じられるようになりたいです。例えば、自分の実年齢と同じぐらいの会社員や刑事とかを演じたいです。
――ちなみに、憧れの先輩を教えてください。
『未来への10カウント』で共演させていただいた木村拓哉さんは、とにかくスゴい方でした。僕はドラマの放送を見て、「この角度だったら、この表情の方が良かったかも?」といった反省をすることが多いんですが、木村さんはカメラに映っている自分の姿をすべて把握しているんです。今思い返しても、とても貴重な経験で、自分の出番がないときも楽屋のモニターで、ずっと木村さんのお芝居を見ながら「スゴい、スゴい」と言っていました。
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阿久津仁愛(あくつ・にちか)
2000年12月23日生まれ。栃木県出身。2015年「第27回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」準グランプリ受賞。俳優デビュー後、16年から4年にわたり、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンで主人公・越前リョーマ役を担当。『俺のスカート、どこ行った?』『マイルノビッチ』『未来への10カウント』『アトムの童』などの話題のドラマに出演するほか、21年には『ツナガレラジオ~僕らの雨降Days~』で映画初出演を果たした。
映画『美男ペコパンと悪魔』
現代・東京。高校生カップルの隼人(阿久津仁愛)と亜美(下尾みう)は、ある日、些細なことでケンカをし、その直後に隼人は交通事故で意識不明に。憔悴する亜美は、隼人が持っていたヴィクトル・ユーゴー著の「美男ペコパンと悪魔」を手に取り、読み始める。ファルケンブルク城主の美しき娘・ボールドゥール(下尾みう/二役)との婚礼を3日後に控えたゾンネック城主のペコパン(阿久津仁愛/二役)は、狩りの腕前を宮中伯に認められ、さまざまな怪物が待ち受ける世界中を旅することになる。
2023年6月2日(金)よりシネ・リーブル池袋、シネ・リーブル梅田ほか全国ロードショー
http://is-field.com/pecopin/index.html
Column
厳選「いい男」大図鑑
映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。
2023.05.26(金)
文=くれい響
写真=末永裕樹
ヘアメイク=伊藤里香
スタイリスト=東正晃