ベンガル地方に伝わる刺し子、カンタ

 インドとバングラデシュの境界にまたがる、ベンガル地方に古くから伝わるカンタは、刺し子の一種。サリーなどの古くなった布を重ね合わせてその上から刺繍を施し、赤ちゃんのおくるみや写真のようなベッドカバーなどに生まれ変わらせます。

 厳しい環境の中で家族の健康と幸せを願う女性たちの思いが詰まったカンタには、決まったルールや図案がありません。地域によって、さらには刺す人によって、全く違うデザインになるのが魅力です。

「魂が感じられるものが好きなんです。ハンドメイドのものは、それを作り上げるまでの物理的な努力や時間が必要だし、何よりその人の気持ちが込められているから、とても惹かれます。作品を通じて作り手の人柄や思いが伝わってくる。古布をパッチワークで再生するカンタは決して高価なものではないし、寧ろその対極にあるとも言えますが、そこにしかない美しさがあるんです」

 カンタが大好きで、ずっと集めているというジゼルさん。インドに行くことが多い友達に、素敵なカンタを見つけたときは買っておいてもらうそう。日本国内を旅行するときもハンドメイド作家や生産者と話すのが好きで、DAMDAMの製品に使うしそは、実際にしそ農家まで出向いて直接話をしながら選んだというから、驚きます。

 最後はそのしそ農家さんも喜んだという、しそのお香が登場します。

2023.03.30(木)
文=松山あれい
撮影=平松市聖