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夫婦愛にときめく

 かね将に来たらこれまたどうしても外せないのが「豚すじ煮」。もつ焼き用に一頭買いする豚をバラす過程で出た端肉をじっくり煮込んだこちらは、なんとフィリピン料理の「アドボ」を意識した味つけだ。

 アドボとはたっぷりのお酢を使った肉の煮込み料理で、それは保存性を高めるための暑い国ならではの調理法なのだとか。と同時に、お酢の効果で肉が柔らかくなり、じっくり煮込むことによって酸味の角がとれ、味の絶妙なアクセントになるという、なんとも理にかなった調理法というわけなんですね。

 ところで、一見ごく普通の大衆酒場になぜこのようなメニューがあるのか? 実はかね将のご主人、金子章治さんの奥様はフィリピン出身。お店がどんどん人気となり、人手が足りなくなってきた頃にちょうど子育てがひと段落。お店にお手伝いに入るようになり、少しずつメニューのアイデアも出されるようになったのだとか。

 ここではやっぱり頼みたいサワー類から、「青リンゴサワー」を。中身の宝焼酎+ハイサワーの青リンゴ味。豪快に氷がやってくるのもなんだか楽しい。

 「白コロホルモン焼」。もつ焼きはもちろん、何を頼んでも間違いのない美味しさ。外はカリッとなかはふわふわ。そしてあふれる甘い甘い脂がたまらない。

 豚バラと軟骨を毎日挽いて作る「自家製 つくね」の凝縮された旨味もすごい!

 はぁ~、本当に来るたびにときめいちゃう名店。まぁ、そのおかげでいつも飲みすぎてしまうんだけど。

焼きとん酒場「かね将」

所在地 東京都品川区西五反田2-6-1石塚ビル1F
営業時間 16:30~23:30(火~土曜)、16:30~22:30(日曜・祝日)
定休日 毎週月曜、毎週第3火曜

パリッコ

酒場ライター・漫画家。酒場好きが高じて会社員から酒場ライターに転身。未知の大衆酒場、ちょっと怪しいとされる店にも果敢に訪れ、心のオアシスを発掘。酒場愛に溢れた文章やイラストは、吞兵衛の心をわしづかむ。酒カルチャー雑誌『酒場人』監修。著書に多数。新刊はスズキナオ氏との共著『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』(スタンド・ブックス)ほか。
Twitter:@paricco

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2023.03.23(木)
文・撮影=パリッコ