この記事の連載
何かと行く機会が多い、新宿、渋谷、五反田、赤坂――。でも、何度となく通っているはずなのに、意外と行きつけの店がつくりにくい場所でもあります。
そんななんだか落ち着かない駅にある「ちょうどいい」お店を、酒場ライターのパリッコさんに教えてもらう連載です。今回は、五反田に来たらぜひ立ち寄りたいお店を紹介します。
カウンターに整然と並ぶ割り材にときめく
大手企業の本社も多数あるオフィス街であり、一方では歓楽街のイメージもある「五反田」。なじみのない人にとっては、安心して飲める大衆酒場はどこ? と迷ってしまう街だろう。
実際僕もそのひとりだが、以前偶然入ってからというもの、僕が五反田に来れば必ず寄ってしまうのが「かね将」。
見ての通り、外観は「ザ・年季の入った大衆酒場」。1983年の創業以来、40年も繁盛を続ける人気店だ
蓄積された年月が生み出す渋い味わいを感じさせながらも清潔な店内。その壁に、魅力的な短冊メニューがずらりと並ぶ。
この空間でお酒を飲んでいるだけで幸せな気分になってしまう、大衆酒場のお手本のような店。
ただ、僕が最大の魅力だと思っているのが、昔ながらの大衆感のなかにときおりキラリと光る、なんていうんでしょうか? ときめき?
そう、かね将って、ただしみじみもつ焼きをつまみにチューハイをちびちび、みたいなだけじゃなく、なんだか妙に心がワクワクときめいてしまうお店だ。
例えば僕が好きなのはこの光景。
カウンターに整然と並ぶ割り材の瓶。もともとは人手が足りず、お客さんに自己申告制で取ってもらえるようにと始めたそうだが、今ではそれがならではの風景になっている。
2023.03.23(木)
文・撮影=パリッコ