仮想空間も時空も超えていった後半名場面

●ウタ「新時代」

 アニメの主人公が紅白に出演し、ステージのど真ん中で歌うとは、ドエライ時代だ。大泉洋に渡された麦わら帽が現実と仮想空間をつなぐという演出はステキだったが、このパターンが2組、3組と増えていったらどうしよう。感情が追いつくか心配。

●三山ひろし「夢追い人~第6回けん玉世界記録への道~」

 人数が増え、すっかり歌の尺を超えているけん玉チャレンジ。けん玉ギネスは別枠を設け、三山ひろしは歌に専念してほしい。ポスト三波春夫と呼ばれる彼の声はいいぞ!

●Vaundy「怪獣の花唄」

 素晴らしい声。素晴らしい開放感! 歌唱中なかなか顔が映らないので顔出しNGなのかと思いきや、milet×Aimer×幾田りらとの「おもかげ」ではガッツリ映り、フィナーレでは櫻井翔の後ろというナイスな位置でステキ笑顔を見せてくれた。「怪獣の花唄」のカメラワークは思わせぶりな恋の駆け引きだったと勝手に解釈。私の負けよ、Vaundy……。

●純烈(ダチョウ倶楽部・有吉弘行)「プロポーズ~白い雲のように」

 小田井涼平の卒業、昨年亡くなった上島竜兵さんの「ヤー!」、そして電波少年へのノスタルジー。いろんな感情が美しい雲のように漂った数分間。

●「ichiban」King & Prince

 過去の自分の紅白記事を読み返すと、私は2度も岸優太にハートを撃ち抜かれていた。今回も本当に素敵でした。ありがとう、ありがとう!

●あいみょん「ハート~君はロックを聴かない」

 「伸び伸び」という言葉がぴったりの歌いっぷり。ギターと声のパワーに「シンプルイズベスト」という言葉の尊さを思い出した。フィナーレの、三つ編みとブルーの大きめジャージ姿が最高に好み。あのジャージはどこのだろう。

●藤井 風「死ぬのがいいわ」

 超絶ピアノから始まり、舞台ギリギリでバタッと倒れ終わる迫力は「歌」を超えて前衛芝居。前回、初登場にして紅白をフリーダムな空気に変えた彼が、今回は情念と愛と死を感じさせるパフォーマンスで、昭和全盛期の紅白感を強烈に思い出させたのが興味深い。

●ゆず「夏色」

 この歌は、聴いた人がもれなく高校一年生あたりに戻るサブリミナル効果が仕込まれているのではないかと思う。事実、私もこの数分間だけで40歳近く若返った気がした。

●石川さゆり「天城越え」

 オーケストラ、和楽器、そして鬼気迫る「ン山が燃える~」と「天城ヒ~越オゥええぇぇ」と情念溢れる睨み! 私の欲しかった要素が濃縮されて震える! 大泉 洋、長友佑都とともに「ブラボー!」と叫んだのは言うまでもない。

2023.01.31(火)
文=田中 稲