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「自分で自分を許すために、今日も私は親孝行をする」

──ご両親の「愛」を感じます。今は喜んでおられるのでしょうね。

 37~38歳くらいから仕事が増え始めたので、今は親も安心していると思います。酒飲みでミーハーな兄も喜んでるし、ある意味家族団らんができるようになったのは親孝行かもしれません。

 一人前にお金を稼げるようになってからは、帰省するたびにフグをご馳走したり、お寿司を食べに行ったりしたこともあったんですけど、「高いものがおいしい」と喜ぶ家族でもないので、今は帰省して母親の手料理を食べてあげることも親孝行かなと思って、母につくってもらったり、一緒につくったりもしています。

──エッセイでは「自分で自分を許すために、今日も私は親孝行をする」と書かれていました。

 夫も子どももいない私にとっては、唯一の気をもむ存在が年老いた両親なんですよ。離れて暮らしている私が、両親と一緒に過ごせる時間は限られているので、帰省した時はできるだけ家の掃除をしたり、冷蔵庫にあるもので簡単な食事をつくったりして、親孝行のノルマを果たしています。

 私が帰るたびに母が食事を用意してくれるのも「あと何回食べられるんだろう」と幸せに感じますね。キャベツがたっぷり入ったちょっと不格好な餃子とか、キュウリの酢の物とか、なんでもない料理なんですけど、それを元気に食卓に並べる母の姿を見ることができるのもうれしくて。

 でも、相変わらず父はしゃべらないし、母は文句、兄は仕事のストレスで、食卓がまったく盛りあがらないんですけど、それも大久保家だなと(笑)。

まるごとバナナが、食べきれない

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集英社
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2022.12.09(金)
文=相澤洋美
撮影=山元茂樹