この記事の連載
- 大久保佳代子さんインタビュー #1
- 大久保佳代子さんインタビュー #2
いとうあさこさんが綺麗になっていく姿に焦り…
──「一人にはなりたくない」「置いていかれたくない」という思いから、親友のいとうあさこさんが綺麗になっていく姿に焦り、心の中で「もっと太れ」と願ったというエピソードも描かれていました。
あれ、ひどいよね~。でもこれは年齢にかかわらず、誰もが持っている部分だと思います。人と比較したり、人を羨んだりする黒い部分って、人間誰もが持っていると思うんですよ。相手のいやなところを見つけようとしたりとかね。
でも、私だって、もちろん本気であさこさんを「養豚場の豚」に育てようなんて思っていないですよ。ただ「あれ? 最近、あさこさん痩せてきて綺麗になってきたな。このままだと、モテちゃうかもしれないな、イヤだな」という黒い気持ちはあったので、そこから「食べさせて太らせてやろう」と感じた思いを、大げさに描きました。
──多かれ少なかれ、友達に先を越されたくないと思ってる部分は、みんなありますよね。
でしょ? でもね、そういう時に「聞いてくださいよ~、あの人ひどいんですよ」って、おもしろくネタにできる人のほうが、私は共感できるんですよ。「あの子が幸せなら私はそれでうれしい」って言っちゃう人より。だって、悪口って、ある種のエンターテインメントみたいなところもあるじゃないですか。
──悪口がエンターテインメントですか?
悪口といっても、聞いているほうがイヤな気持ちになる悪口じゃないですよ。たとえば自分のことを悪く言う時でも、そこにちょっとしたおもしろさとかセンスを加えることで、最高のエンターテインメントになる気がするんですよ。
「エンタメ悪口」って聞いているほうも楽しいじゃないですか。誰かのイヤな部分を、聞いている相手を不快にさせないように、笑いに変えて伝えられる人ってなかなかいないんですけど、私がこんなふうに「エンタメ悪口」を言うことで誰かが喜んでくれるんじゃないかと思って言っているんですよね。なんて、本当はただ単に、私が悪口を言いたいだけ、という黒い部分もあるんですけど(笑)。
まあ、あさこさんのエピソードに限っていえば、彼女のふところの深さに甘えて、いい意味でコントのネタ的に利用させてもらっている部分も大きいですね。
2022.12.09(金)
文=相澤洋美
撮影=山元茂樹