『とと姉ちゃん』や『過保護のカホコ』、『同期のサクラ』や『にじいろカルテ』など、幅広いキャラクターを数多く演じてきた高畑さん。
最新映画『浜の朝日の嘘つきどもと』で演じるのも、ハードモードな人生を送ってきた“嘘つき”のヒロインという、これまた個性的な役柄だ。
どんなに難しい役柄もとびきりチャーミングに演じてしまう彼女の変わらぬ芸達者ぶりと、今年30歳を迎えるひとりの女性として、密かに変化している心の内に迫ってみた。
「福島での撮影は、まるでセラピーでした」
――『浜の朝日の嘘つきどもと』では、福島県の南相馬を舞台に、閉館が決まった映画館「朝日座」の存続のために奔走するヒロインの茂木莉子を演じています。初めてご一緒したタナダユキ監督とのお仕事はいかがでしたか?
監督の作品が大好きだったので、いつかご一緒したいとは思っていたんです。それがどんなタイミングかは想像もつかなかったんですが、震災から10年が経ち、今作るべき映画でご一緒できることにとても巡り合わせを感じて。個人的には、去年の最初の緊急事態宣言後の初めてのお仕事だったので、二つ返事で「ぜひやりたいです」とお伝えしました。
自覚はなかったのですが、当時多分、なんとなく凹んでいたんです。自粛期間にはいろんな情報が飛び交っていましたからね。そんなときに、ポンッと1ヶ月福島に滞在したので、セラピーに行っているような感覚になりました。監督はあまり踏み込んでくる感じの方ではないですし、いい距離感を保ちながら、みんなでいい映画を作ろうと楽しめるチームだったと思います。
――茂木莉子の人生に大きな影響を与える高校時代の恩師・茉莉子先生は大久保佳代子さんが扮しています。キャスティングが絶妙ですね。
ホントに天才的なキャスティングですよね。台本の上でも茉莉子先生って超魅力的だったんですが、誰が演じるのかイメージが浮かばなかったんです。で、大久保さんが演じると聞いて「そうきたか! これは絶対ハマるな」って思いました。
大久保さんに限らず、映画館の支配人を演じられた柳家喬太郎師匠やドラマ版で主人公を演じた映画監督役の竹原ピストルさんも、本業が別にある方ばかり。みなさん「あまりお芝居したことないのにすみません。助けてくださいね」って感じで現場にくるんです。
私も「いやいや、そんな……」みたいに、みんなが謝り合っていて(笑)。それが新鮮だったし、シンプルにみんなで一から作り上げる感じが楽しくて。穏やかで豊かな時間でしたね。
2021.08.28(土)
文=松山 梢
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=市岡 愛
スタイリスト=岩田麻希