「迷える時期のおもしろい女性の役が増えてきた」

――劇中では高校時代も演じていますが、制服姿に違和感がないのが驚きでした。

 結構イケてましたよね(笑)。割とドキドキしていたんです。そろそろ無理かなって。

――今年の12月には、30歳を迎えられます。

 それこそ私は童顔なので、20代前半は“若い”“幼い”“明るい”みたいなものを求められるし、自分もそうあらねばと思っていたんです。

 でも30歳が近づいてくると全然そういうものを求められなくなってきて。だからすごく楽なんです。無理しないで普通にいられる。多分、精神年齢的なものは10代からそんなに変わっていないんです。もともとちょっと、おばあちゃんぽいというか(笑)。そこに年齢がちゃんと追いついてきた感じがします。

――29歳の今、俳優としてはどんなステージにいると思いますか?

 とってもいい時期に入りかけている気がします。30歳前後って、結婚とか出産とか、そういうことが関係している内容の作品が多くて。舞台『ウエイトレス』も、望まない妊娠をしたあとに人生をどう選ぶかという作品でした。そういう選択が多い迷える時期の役ができるようになったんだなって思います。

 年齢的には自分も渦中にいるのに、ちょっと人ごとみたいになっちゃってますけど(笑)。女性だからこそおもしろいと感じられる役にちょっとずつ出会い始めているので、ここから5年ぐらいは楽しみですね。

――以前、高畑さんは「仕事はあくまでも生活をするための手段。一番大切にしたいのは自分の人生」とおっしゃっていたのが印象的でした。今もその考えに変わりはありませんか?

 これまでは「自分が楽しいと思えたら幸せ」と思いながら仕事をしてきたんですが、今では「人が元気になるための片棒をかつげたらいいな」と思えるようになったかもしれません。劇場でエンタメを求めるエネルギーを直に受け続けたことで、見てくれる人のことをより考えられるようになった気がします。

 自分のためだけに頑張るって、モチベーションのガソリンに限度があるんですよね。今は見てくれる人のために頑張るっていう視点が一個加わって、よりパワーが増した感じ。大人になった気がします。

――お仕事以外に、大人になったなと感じることは?

 仕立屋さんに洋服を直しに行くようになったんです。今まではちょっと丈が長かったりすると自分でパパッと縫っていたけれど、自分だとそんなに綺麗な仕上がりにはならなくて。お気に入りの服を仕立屋さんで綺麗に自分のサイズに合わせてもらうことって、ちゃんと身なりをケアしている感じがして大人だなって思いました。

 あとは植物が好きになったこと。ゴムの木を買ったり、お花を飾ったりするようになりました。もちろんこれまでも綺麗だなとは思っていたけど、その種類が変わったのかも。今では花束をいただくとすごく嬉しくて、ドライフラワーにするために吊ったりすることも。植物に愛が芽生え出したら、本当に大人(笑)。ちょっとずつ、変化していっている気がします。

高畑充希(たかはた・みつき)

1991年12月14日生まれ、大阪府出身。2005年に舞台で俳優デビュー。主な出演作はドラマ『とと姉ちゃん』、『過保護のカホコ』、『同期のサクラ』、『にじいろカルテ』、映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』、『ヲタクに恋は難しい』、『明日の食卓』、『キャラクター』、舞台『エレクトラ』、『奇跡の人』、『ウェイトレス』など。主演を務めるWOWOWの連続ドラマW『いりびと―異邦人―』が11月より放送・配信。22年夏にはミュージカル『ミス・サイゴン』にてキム役が決定している。

映画『浜の朝日の嘘つきどもと』

福島県・南相馬にある映画館「朝日座」。支配人の森田保造(柳家喬太郎)は、経営が傾いた映画館を閉じることを決意する。ところが、茂木莉子と名乗る女性(高畑充希)が突然現れ、「ここが潰れたら本当に困る!」と主張する。自ら町に住んで再建のために奔走し始めた莉子の行動の裏には、ある人との約束を果たしたいという想いがあった。

出演:高畑充希、柳家喬太郎、大久保佳代子 ほか
脚本・監督:タナダユキ

8月27日(金)福島県先行公開
9月10日(金)全国ロードショー
https://hamano-asahi.jp/

2021.08.28(土)
文=松山 梢
撮影=榎本麻美
ヘアメイク=市岡 愛
スタイリスト=岩田麻希