陽射しに輝く水の美しさが心を打つ清流が高知には多くある。一滴の水の美味しさ、清流から生まれた一粒の塩の力を味わう旅へ。
絶品の“完全天日塩”を作る職人や、旬のグルメを味わえるレストランやホテルなど、厳選した情報を4回に渡りご紹介。
1回目は国内外のレストランから注文が絶えない唯一無二の塩を作る職人をご紹介。
高知県の東部に位置する奈半利川の下流で太陽と風だけで“完全天日塩”を作る職人がいる。物作りに打ち込む真摯な姿と塩一粒に力がある、滋味深い味を確かめる旅へ。
森から始まる豊かな水と太陽と潮風だけで作る塩
◆田野屋塩二郎(たのや・えんじろう)
起床は朝4時。塩を触り、一つひとつの状態を見るのが、365日欠かさず当たり前に行っている仕事だ。
「夜泣きしている子がいないか、起きちゃっている子はいないかを見て回るんです。放っておくとダメになるので日が昇る前に寝かせつけます(笑)」
愛情深く塩と向き合う田野屋塩二郎さんは、完全天日塩を作る製塩職人。完全天日塩とは、太陽の光と潮風だけで作る塩のことで、彼の場合、ビニールハウスに塩水が入った木箱を並べ、人工的な温度調節はせずに自然の力だけで製塩をする。
塩の状態は、手触り、匂いなど感覚をフル稼働させて「面倒を見る」と言う。塩作りの基盤となる「水」は工房近くを流れる奈半利川から、満潮になる満月に汲み上げている。
場所は川の真水と海水が混ざり合う汽水域あたり。水質は、通常より塩分量が少なく、真水が多いため栄養分が高い。
「塩で重要なのは海や川じゃなくて山。高知は手付かずの森が多く、養分が川から海へと流れ、結果的にいい塩ができるんです」
自然の繋がりで生まれた塩は、すべてオーダーメイド。飲食店からの注文が主流で、肉や魚などの素材の部位に合わせた塩を手がける。
通常1カ月で作る所を最低3カ月かけ、長いものだと1年以上となり、塩に負担をかけない製法により養分豊かな塩が出来上がる。
現在、注文は5000人待ちという伝説の塩ではあるが、高知県内で楽しめる店もある。塩二郎さんは誰にでも塩を売るわけでなく「この人なら」と思う相手のみ。料理人との相乗効果で生まれるごちそうを味わいたい。
田野屋塩二郎(たのや・えんじろう)
1971年、東京生まれ。サーフショップを経営していたが30歳半ばで日本一になろうと、一念発起し、高知県黒潮町で完全天日塩を作っていた吉田猛さんに師事。2年後、田野町に製塩所を造り、オーダーメイドの塩を手がける。
【取扱店】
東京・銀座「まるごと高知」
https://www.marugotokochi.com/
※不定期で入荷。
高知・清流王国の恵み
一滴の水、一粒の塩
Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2022.10.10(月)
Photographs=Wataru Sato
この記事の掲載号
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