見やすくなった公式サイトに一抹の寂しさが

 ペースを乱さず、じっくり確実にキャリアを重ねる緒形直人。しかし、5年前と比べ、少しだけ残念な変化が一つあった。私が大好きだった、彼の「デジタルの進化についていけず途中で放置した」的な懐かしいデザインのオフィシャルサイトが、スマホ対応可能な今風デザインにアップグレードされていたのである。

「田中さんッ、緒形直人さんのサイトデザインが変わっています!」

 知り合いから報告を受け、慌ててクリックしたときのショックと寂しさは今でも忘れない。

 阿部寛HPほどの初期感はなかったが、それでも「ビルダーで作りました」的な味があり、彼の不器用だけど誠実な雰囲気が出て好きだった……。もう少しだけ、あのデザインを愛でたかった。ネットは本当に諸行無常である。

 未練は捨てよう。今の読みやすくなった公式サイトはとても充実していて、彼の順調な活動ぶりが見て取れる。映画は特に、1年に1~2本という理想的なペースで出演。2022年9月16日からは、松山ケンイチさん主演のハートフルな人間ドラマ「川っぺりムコリッタ」が公開される。緒形直人はイカの塩辛工場の社長役。予告では緒形さんの姿は見えないものの、食事シーンがほこほこ……! おいしいごはんと緒形直人が出る作品にハズレなし。観に行かねば!

 ストーリーをしっかりと受け止める名キャッチャーのような緒形直人の包容力は、これからも多くの作品で必要とされるはず。彼と同時期、トレンディ俳優と言われた吉田栄作、織田裕二もシブさを増し活躍されている。三人がガッツリ絡む、厚みのある歴史大作が観てみたい!

 5年後、10年後、何回でも恋する準備はできている。

田中 稲(たなか いね)

大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。
●田中稲note https://note.com/ine_tanaka/

Column

田中稲の勝手に再ブーム

80~90年代というエンタメの黄金時代、ピカピカに輝いていた、あの人、あのドラマ、あのマンガ。これらを青春の思い出で終わらせていませんか? いえいえ、実はまだそのブームは「夢の途中」! 時の流れを味方につけ、新しい魅力を備えた熟成エンタを勝手にロックオンし、紹介します。

2022.08.25(木)
文=田中 稲