●前田弘二監督、白石晃士監督との出会い

――そして、日中は競艇場でアルバイトしながら、夜間に専門学校に通い、そこで出会った仲間と自主映画を制作。そんななか『絵里に首ったけ』(00年)で俳優デビューされます。

 バイト先で知り合った友だちが、その後に映画の助監督になり、「役者が降板したから出ないか?」と声をかけられたのがきっかけです。大阪オールロケの撮影現場で、そこで監督・脚本家の佐藤佐吉さんや俳優の森下能幸さんと知り合いました。お二人と話すうち、俳優になるためには東京へ出て行かねばならないと改めて理解し、友人を頼って上京を決意しました。

――そして、2002年に上京。その後、何作も組むことになる前田弘二監督や白石晃士監督の出会いについても教えてください。

 百合ヶ丘にある友人の六畳一間の部屋に居候させてもらいながら、森下さんから紹介してもらった録音スタジオの中にある喫茶店でアルバイトをしていました。佐吉さんには、ありがたいことに沢山の出会いを作っていただきました。その流れで知り合ったのが前田弘二監督です。たまたま帰りが一緒で飲むことになり、脚本を書いていると聞き、読ませてもらったら、とても面白かったんです。前田さんは好青年なのに書く脚本が変わっていて、そんな彼の自主映画に出してもらうようになりました。その中に『鵜野』(05年)という作品がありまして、それを観てくださった白石晃士監督から『オカルト』(09年)の出演依頼が来たんです。

●自身がモデルになった作品にも出演

――そんなPOV(主観映像)&モキュメンタリー形式による主演作『オカルト』で演じた江野祥平ですが、そのキャラクターのインパクトはかなりのものでした。

 白石監督とは、それまで面識はなかったのですが、台本を開いたら役名が“江野祥平”となっていてビックリしました。後に断られないためだったと聞きました(笑)。商業映画では初めての主演作だったので、とても嬉しかったです。最新作となる『オカルトの森へようこそ』は、白石監督の現時点での集大成とも言える作品になったのではないかと思っていますし、完成が楽しみです。

――13年公開の大作『舟を編む』では製紙工場の営業部員・宮本を演じられ、16年公開の『俳優 亀岡拓次』では安田顕さん演じる主人公のモデルとなったほか、俳優仲間の宇野泰平という役で出演もされました。

 『舟を編む』の石井裕也監督は、『ハラがコレなんで』に続き、二回目の出演でした。宮本を演じられたことはとても大きかったですし、石井監督は商業映画デビューする前から知り合いですが、会った頃から変わらない映画への姿勢に嬉しくなりました。脚本も思い出深く、書かれた渡辺謙作さんの宮本への愛情を感じました。それは宮本の雰囲気が、僕に近くなっていたからです(笑)。『俳優 亀岡拓次』で演じた宇野泰平という役は、横浜聡子監督がイメージを膨らませてくれました。そんな泰平が自分に近いかというと、わからないです。人ってわからないじゃないですか? 自分のことすらわかりませんし。あるかないかわからない僕の側面を横浜監督が引き出してくれたという実感があります。

~次回は、最新出演作『ビリーバーズ』についても語っていただきます~

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宇野祥平(うの・しょうへい)

1978年2月11日生まれ。大阪府出身。2000年に『絵里に首ったけ』俳優デビューし、09年の『オカルト』で初主演。名バイプレイヤーとして、数々の作品に出演。本年は『前科者』『とんび』『夜を走る』に出演。今後も『アキラとあきら』(2022年8月26日[金]公開)、『オカルトの森へようこそ THE MOVIE』(8月27日[土]公開)、『さかなのこ』(9月1日[木]公開)ほか、公開作が控える。現在、テレビ東京水ドラ25「ザ・タクシー飯店」が放送中。

『ビリーバーズ』

互いをオペレーター(磯村勇斗)、副議長(北村優衣)、議長(宇野祥平)と呼び合い、無人島で共同生活を送る3人。宗教的な団体・ニコニコ人生センターに所属する彼らは、俗世の汚れを浄化し、安住の地を目指すための修業を行っていた。だが、そんな彼らの日常は、些細な問題から綻びを見せ始め、互いの本能と欲望が暴き出されていく。
©山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会 
2022年7月8日(金)より、テアトル新宿ほか全国順次公開
https://believers-movie2022.com/

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2022.06.24(金)
文=くれい響
撮影=平松市聖