ごく普通の中年男からブッ飛んだ変態まで、変幻自在に演じる個性派俳優・宇野祥平。その足跡を振り返る後篇では、大きな話題を呼んだ『罪の声』の役作りについてのほか、磯村勇斗と共演した最新出演作『ビリーバーズ』についても語ってもらいました。

» 宇野祥平さんの写真を全て見る


●大きな転機となった『罪の声』

――2020年は12本の映画が劇場公開され、劇中のキーパーソンとなる行方不明者・生島聡一郎役を演じた『罪の声』では「キネマ旬報 ベスト・テン」など、さまざまな助演男優賞を受賞。そういう意味では、大きな転機となった作品といえますよね?

 はい。オファーをいただいたとき、土井裕泰監督は僕よりも僕のことをよく知っているようでドキッとしました。塩田武士さんの原作は、小説のモチーフになった事件のことをよく覚えているので事前に読んでいたのですが、なぜか生島聡一郎という人に惹かれるものがありました。同じ関西生まれ、関西育ち、同世代。自分に重ねた部分があったんです。僕は早くに母を亡くしまして、母に対しての後悔や失望のようなものが聡一郎への共感になったのだと思いますが、土井監督とは面識がなかったので驚きました。

――ちなみに、『罪の声』では役作りとして、10kg以上減量されたそうですね。

 原作を読んだとき、聡一郎の身体が壊れていっているような、何と声をかけていいのかわからなくなるような、それまでの時間が滲み出てしまっているような強い印象を持ちました。それで、今の体重では聡一郎に見えないと思い、減量しました。

●自身が歓喜するほど、原作ファンだった最新作

――そして、最新出演作『ビリーバーズ』では、無人島で共同生活を送る3人のうちのひとり、議長役を演じられています。

 山本直樹さんの『ビリーバーズ』を城定秀夫監督が映画化されると知ったとき、おふたりのファンとして、とても嬉しかったです。しかも、その『ビリーバーズ』が磯村勇斗さんの初主演作になるということで。北村優衣さんと共に参加できて大変光栄でした。山本さんの原作を真っ直ぐ捉えた素晴らしい脚本でしたし、現場に立ってみて見えてくるものが大きかったです。孤島、景色、プレハブ小屋、ニコニコTシャツなど……、各パートのスタッフ、磯村さん、北村さん、共演者の皆さんにヒントをもらいながら、城定監督に丁寧に演出してもらいました。

――印象に残った撮影エピソードがあれば教えてください。

 孤島に暮らす三人から始まる映画なので、磯村さん、北村さんと多くの時間を一緒に過ごしました。ずっと一緒だったので、今では会話があってもなくても何も気にならない良い関係になったと勝手に思っています(笑)。二人は僕より随分年下ですが、教えられることが多く、助けられました。現場は天候の問題はありましたが、状況に左右されることなく、臨機応変に進んでいきましたし、改めて城定組の凄さを目の当たりにしました。

2022.07.08(金)
文=くれい響
撮影=平松市聖