●役と自分が重なっていった初主演映画
――21年公開の『孤狼の血 LEVEL2』では、これまでのイメージを裏切る尾谷組の構成員を演じられました。
自分は子分役だったのですが、オーディションでは、3人の俳優が組長役と若頭役と子分役の3役をローテーションで演じたんです。『アウトレイジ』が好きだったこともあり、組長役を演じることは刺激的で楽しかったですね。現場では髪型を角刈りにして役に挑んだんですが、自分の役の幅を広げる一本になったと思います。自分の親分役だった渋川清彦さんからは「(3度目の共演で)縁あるね」と言われました(笑)。
――このたび公開される『山歌』では、山から山へと旅を続けるサンカの家族と出会う都会育ちの主人公・則夫を演じられています。
これまで、いろいろなものに押さえつけられていた則夫が、大自然でサンカの人たちと出会うことで、どんどん頼もしくなっていく話なのですが、群馬県中之条町での撮影がとても過酷で、役と自分が重なっていくようでもありました。映画初主演というプレッシャーもありましたが、「作為がないように、ナチュラルに」という笹谷監督の言葉を頼りに頑張っていきました。
――本作では、どんな新しい杉田さんが見られると思いますか?
自分では実感がないことですが、作品を観る方には少しでも演技や立ち振る舞いといったものの成長を感じ取ってもらえたら嬉しいです。あと、サンカと行動を共にし、自然界の命をいただくシーンで蛇を割く場面があるのですが、ちょっとリアルな反応が出ているような気がしますね(笑)。
●どんな役でも自分を残していける俳優に
――将来の展望や目標は? また憧れの人を教えてください。
先ほどの大杉さんのお話のように、どんな役を演じても、映像とともに、しっかり自分を残していけるような俳優になりたいです。今後は刑事役だったり、『レオン』のゲイリー・オールドマンや『羊たちの沈黙』のアンソニー・ホプキンスのような狂気的な役もやってみたいです。あとは椎名桔平さんと共演してみたいです。
杉田雷麟(すぎた・らいる)
2002年12月10日生まれ。栃木県出身。17年より俳優活動を開始し、19年公開の『半世界』では、第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞、第34回高崎映画祭最優秀新進俳優賞を受賞。そのほかの作品に、『長いお別れ』(19年)、『子どもたちをよろしく』(20年)、『罪の声』(20年)、『孤狼の血 LEVEL2』(21年)などがある。
映画『山歌(サンカ)』
1965年。東京で暮らす中学生の則夫(杉田雷麟)は、受験勉強のために、田舎の祖母の家へやってくる。どこか生きづらさを感じていた則夫は、ある日、山から山へと旅を続ける省三(渋川清彦)ら、サンカの家族と出会う。そして、既成概念に縛られずに自然と共生する彼らの姿に惹かれていくのであった。
https://www.sanka-film.com/
2022年4月22日(金)より、テアトル新宿、アップリンク吉祥寺ほか、全国順次公開
©六字映画機構
Column
厳選「いい男」大図鑑
映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。
2022.04.22(金)
文=くれい響
写真=末永裕樹