映画『フタリノセカイ』で、子どもの頃から違和感を持っていた自身の性に対して向き合い、自分らしく生きていこうとするトランスジェンダー・真也を演じる坂東龍汰。2021年10月期には「真犯人フラグ」など、3本のドラマに出演するなど、まさに注目の彼が意外な幼少期やキャリアを振り返った。

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●表現者としての道に進みたい

――3歳までニューヨークで暮らし、その後は北海道に引っ越されたそうですね。

 ニューヨークにいたときの記憶はまったくないです(笑)。北海道で暮らすようになってからは部分的な記憶はあるんですが、感情的な記憶がなくて……。ただ、ほかの家がない海の近くに住んでいたので、自分で魚を獲ってきて、それを捌いたり、たらいに乗って海に出たり、テトラポッドに入って遊んだり、自分なりにサバイバルな遊びを楽しんでいました。

――その後、演劇との出会いは?

 小学4年生のときに、姉が入っていた演劇塾という劇団に入りまして、年に1回だけある公演に向けて頑張っていました。その一方で、高校の舞台卒業プロジェクトをやることになって、そこで「民衆の敵」という作品で主演することになったんです。それまでは漠然と「将来はカメラやギター、社交ダンスといった表現者の道に進むんだろうな」とは思っていたんですが、「民衆の敵」の長台詞などで、とても苦労したことをきっかけに、自分の感情が大きく動き、親に「将来、役者になりたい」と言いました。

――その頃から、村上虹郎さんと仲が良かったようですね。

 お互いにシュタイナー教育を受けていたこともあり、交流会などを通じて、姉が知り合いだったんです。だから、彼が『2つ目の窓』で俳優デビューしたことも「スゴいなぁ」と思って見ていましたし、東京に出てきて、半年ぐらい事務所が決まらなかったときも、いろいろ相談させてもらいました。

●転機となった戦時中を描いた主演ドラマ

――そして、17年に俳優デビューされ、翌18年にはドラマ「花へんろ 特別編 春子の人形 ~脚本家・早坂暁がうつくしむ人~」で初主演を務められます。

 いろんなオーディションを受けさせてもらった結果、最初にナイキのCMが決まったときは、めちゃめちゃ嬉しかったですね。「花へんろ」では戦時中の早坂暁さんを演じたのですが、これもオーディションでした。

 最初は主演とはどういうことなのか、あまり理解できなかったのですが、台本をいただき、キャストのみなさんと通しリハをすることで、「これは大変なことが起きている」と実感し始めました。それで台本を必死に読みまくって、書き込みまくって、自分のできることを最大限にやりました。今でも見返すぐらい、間違いなく自分にとって転機になった作品だと言えます。

――19年公開の『十二人の死にたい子どもたち』では、杉咲花さん、新田真剣佑さん、北村匠海さん、高杉真宙さん、黒島結菜さん、橋本環奈さんといった同世代の若手俳優とともに、密室劇を演じられました。

 自分の中でお芝居の概念が変わるなど、いろんな刺激を受けた「花へんろ」の直後、坊主にした髪の毛がまだ伸び切っていないとき、言葉を掛け合う独特なオーディションだったことを覚えています。そのときは技術的にも、気持ち的な部分も全力でぶつけてみようという覚悟で挑みましたが、「正直決まらないだろうな」と思っていました。だから、受かったときはビックリして、雄叫びを上げました(笑)。

――20年に公開された『#ハンド全力』『弱虫ペダル』など、同世代の俳優たちとの共演作が続きます。

 仲の良いチームを作り上げる設定ということもあり、みんなと台本の話や人生の話など、いろいろとコミュニケーションを取りながら、切磋琢磨していった感じがします。そのため、みんなとご飯に行くことも多かったのですが、言ってしまえばライバルですから、力まず、尊重し合って、現場でぶつかり合っていきたいと、常に思っていますね。

2022.01.14(金)
文=くれい 響
撮影=平松市聖