WEBライターのカツセマサヒコによる長編小説デビュー作を映画化した『明け方の若者たち』で、北村匠海演じる主人公“僕”の親友・尚人を演じる井上祐貴。「ウルトラマンタイガ」としても知られる彼のデビューからの足跡を振り返ります。

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●人生経験として、「ホリプロタレントスカウトキャラバン」に応募

――幼い頃に持っていた夢は?

 警察官を題材にしたドラマものが大好きだったこともあり、警察官になりたかったです。その後、小学2年生のときにサッカーを始め、サッカー選手にも憧れましたが、中学に入ったぐらいに「上には上がいる」という現実に直面しました。それでもボールが蹴れる環境にいたかったこともあり、フットサルを始めました。

――17年、大学3年生のとき、友人の推薦で「第42回ホリプロタレントスカウトキャラバン」に応募されました。

 当時、将来やりたいことが決まってなくて、就職活動もしていなかったんです。そんなとき、友だちから「メールでこんなオーディション見つけたけどまだ何も決まってないなら試しに受けてみれば」と勧められて受けたんです。ただその頃は芸能界への憧れみたいなものはまったくありませんでした。

――その結果、審査員特別賞を受賞しました。

 メール審査の後は、20秒の自己PRをする一次審査だったんですが、僕は私服で「ご縁があったら宜しくお願いします」程度のことしか言っていないんです。でも、みなさん衣装とか小道具とかを持ってきていて、その雰囲気に圧倒されたことを覚えています。

 その後、ファイナリスト10人が選ばれる合宿があったのですが、そのときやっとスイッチが入りましたね。初めてダンスをやったのですが、まったく踊れなかったのが悔しくて……。自分にできる精一杯で挑んだ結果が、審査員特別賞に結びついて良かったと思っています。

●とても素敵な現場だった「ウルトラマンタイガ」

――大学在学中の18年、ミュージカル「ピーターパン」の海賊マリンズ役で俳優デビューされます。

 オーディションで決まったのですが、ここでもダンスと歌で苦戦しました。稽古も1カ月ちょっとある中、毎日無我夢中にやっていたので、地方公演まで全24公演あったのですが、とにかく刺激的で、まるで一瞬の出来事でした。それによってこの仕事が好きになりましたし、もっといろんな役を演じてみたいと思いました。デビューが「ピーターパン」で良かったです。

――翌19年には、特撮ドラマ「ウルトラマンタイガ」の工藤ヒロユキ役で初主演を務めました。このときのオーディションの思い出は?

 前と左右にいる3人の敵を倒して、自分なりのポーズを決めてください、という課題が出たのですが、僕はサッカー経験を生かして、3人とも蹴りで倒したことを覚えていますね(笑)。ただ、これからいろんなオーディションを受けることを覚悟していたので、まさか受かるとは思ってもいませんでした。

――タイガがウルトラマンタロウの息子であるという設定に対するプレッシャーみたいなものは?

 成長してから見ていなかったこともあり、できるかぎりシリーズを見ました。見れば見るほど、ハマっていったのですが、そこに携われるというのが嬉しい反面、プレッシャーもかなりのものでした。ただ、どうすることもできなく、目の前にあることをやり続けるのが精一杯だった半年間でした。でも、とても素敵な現場でした。今となってみれば、もっと貪欲にスタッフさんにいろいろ聞けばよかった、と後悔しています。

2021.12.24(金)
文=くれい 響
撮影=平松市聖