●体重を8キロ落とし、毛の色を変えて役作り

――それでは自身にとって、転機になった作品は?

 やはり「ウルトラマンタイガ」ですね。あとは、ホリプロ60周年記念映画で、優希美青さんとW主演させていただいた『NO CALL NO LIFE』(21年)。あの映画では、僕が演じた春川真洋と桜井ユキさんが演じた母親が対峙するシーンで、そのとき自分が芝居しているとか、目の前にカメラがあるとか、そういうことを一切忘れるという初の体験をしました。桜井さんのお芝居に刺激を受けていくことが、自分の中では衝撃的でした。

――『NO CALL NO LIFE』の真洋は、髪の色がオレンジの破滅的な不良少年役ということで、熱い性格を演じた「ウルトラマンタイガ」とは違う役作りだったのでは?

 僕が原作を読んで感じた真洋のイメージが「風で飛んでいきそうな少年」だったので、体重を8キロ落としました。あと、「毛の色は黒くない」というイメージから、すね毛もブリーチしました。そうやって、見た目から役作りをしていきました。

――「13(サーティーン)」(20年)や「痴情の接吻」(21年)などのドラマに関してはいかがでしたか?

 「13」のときは、自分が演じた渉が女性に取る思わせぶりな態度に疑問を持ちながらも、視聴者の方にもそう思ってほしいと思いながら演じていました。「痴情の接吻」のときは、主人公の柏木和華に片思いする役だったので、彼女をいつも意識して見つめてました。

●「こういう奴、近くにいる」と思える新作の役柄

――このたび公開される最新出演映画『明け方の若者たち』では、北村匠海さん演じる主人公が入社する会社の同期・尚人を演じられています。2人の独特な空気感はどのようにして作られたのですか?

 こういう時期なので、クランクイン前に一緒に、ご飯に行くこともできなかったんですが、これは北村匠海マジックでしょうね(笑)。匠海くんとは初日の昼前ぐらいから「難しいセリフあるね」といった話をし始めて、共通の趣味だった自転車やゲームの話をしたりしていたので、カメラが回っているときと回っていないときの温度感があまり変わりませんでしたね。匠海くんは、そういう空気感を作るのが巧いんです。あと、2人で新卒オリエンテーションのプレゼンをするシーンから順撮りだったのも大きかったです。

――劇中では新卒から6年間を演じていますが、難しさみたいなものは?

 原作や台本を読んでいる段階から、尚人に共感していましたし、年月を重ねるごとに、衣装も変われば、ヒゲを生やしたり、風貌も変わるし、セリフとして発する考え方も変わっていくんです。そこで新たなスイッチが入りましたし、それが楽しかったです。そういえば、バッティングセンターで球を打ちながら長台詞を言うシーンがあったので、「僕のせいで撮影が押してはマズい」と思って練習に通いつめたんです。そしたら、打球はみんなCG処理だったんです(笑)。

――本作では、どんな新しい井上さんを見せられると思いますか?

 友だち思いで、しっかりアドバイスしてくれる。実際に僕も思ったように、「こういう奴、近くにいる、いて欲しい」と思ってもらえるよう意識しました。また、「ウルトラマンタイガ」とは違う意味で、どこかカッコつけてしまう所も尚人のキャラクターなので、そこにも注目してほしいです。

●目標は小栗 旬と刑事役で共演

――将来の展望や目標を教えてください。

 目の前にある仕事を一つひとつこなしながら、まずは映画で新人賞を獲りたいです。あとは、幼い頃の夢でもあった警察官の役をやりたいです。刑事役を演じる小栗旬さんが大好きなので、もし後輩刑事役で共演させていただける機会があれば最高ですね!

» 井上祐貴さんの写真を全て見る

井上祐貴(いのうえ・ゆうき)

1996年6月6日生まれ。広島県出身。2017年、「第42回ホリプロタレントスカウトキャラバン」で審査員特別賞を受賞。翌18年、ミュージカル「ピーターパン」で俳優デビューし、19年「ウルトラマンタイガ」では初主演を果たす。21年、『NO CALL NO LIFE』ではW主演を務めている。

映画『明け方の若者たち』

明大前で開かれた退屈な飲み会に参加した“僕”(北村匠海)は、そこで出会った魅力的な“彼女”(黒島結菜)に一瞬で恋をする。世界が“彼女”で満たされる一方で、社会人になった“僕”は、同期の尚人(井上祐貴)とともに、夢見ていた未来とは異なる人生に打ちのめされていく。

http://akegata-movie.com/
2021年12月31日(金)より公開

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2021.12.24(金)
文=くれい 響
撮影=平松市聖