吉永小百合主演作『北の桜守』の主要キャストに抜擢後、さらなる躍進を続ける俳優・毎熊克哉。今泉力哉監督と初めて組んだ『猫は逃げた』が公開目前となった彼の魅力に迫る第2回。

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●初心にかえることができた舞台


――自主映画『ケンとカズ』での好演から、日本映画界から一躍注目された毎熊さん。2018年には『私の奴隷になりなさい第2章 ご主人様と呼ばせてください』『私の奴隷になりなさい第3章 おまえ次第』で、商業映画初主演を務められます。

 壇蜜さんが主演されたヒット作の続編ということで、最初にお話をいただいたときは、いろいろと悩みましたね。ただ、原作を読んで素直に面白い! と思ったので飛び込むことにしました。"商業映画初主演"でしたが、自主映画とかスタイルは関係なく、城定組の皆さんと映画に没頭できたのは楽しかったですし、主演が担う責任の重さや難しさも強く感じる事ができました。

――ちなみに、ご自身にとって転機になった作品は?

 しばらく演劇をやっていなかったなか、19年にやらせていただいた舞台「後家安とその妹」ですかね。舞台に立つのは5~6年ぶりだったと思います。演劇では熱い底力を持っていないと人前に立てない感覚があって、何も誤魔化せないんですよね。初心にかえることもできて良かったですし、やり切ったことで自信もつきました。

●「まんぷく」「恋つづ」など、TVドラマでも活躍

――18年、NHK朝ドラ「まんぷく」では後の「まんぷく食品株式会社」に勧誘される森本役を演じました。また、20年のドラマ「恋はつづくよどこまでも」の医師・来生役も印象的でした。

 「まんぷく」の撮影ではあまり自覚がなかったのですが、放送が始まると「日本中のみなさんが観てるすごい番組なんだな!」と改めてびっくりしました。「遠い田舎に住んでる祖父や祖母も喜んでる」って連絡があって。映画だと、そこまでは広がらないですからね。嬉しかったです。

 「恋つづ」は、これまで犯罪者の役が多かった僕をキャスティングしてくれたことに感謝しかありません。ある意味、奇跡ですし(笑)、転機といえるかもしれません。映画とは違って、テンポ良く撮っていくTVドラマを体験させていただき、とても勉強になりました。

――20年に酒井/酒呑童子役で出演されたドラマ「妖怪シェアハウス」は、続編・映画化が決まりました。また、21年の「コントが始まる」で演じられた、菅田将暉さん演じる主人公の兄役は、出番が少ないながらも、かなりのインパクトがありました。

 「妖怪シェアハウス」は2カ月ほどの自粛期間が明けて初の現場だったのですが、自分や世間が不安に包まれていたあの状況で、あのようなコミカルで楽しい内容の作品に出会えて光栄でした。今は続編の撮影真っ最中で、またあのメンバーたちと楽しい日々を過ごしています。特殊メイクが3時間ぐらいかかるので、大変ですが(笑)。

 「コントが始まる」に関しては、自分が関わっていなかったとしても好きな作品だったと思います。売れない芸人たちのサクセスストーリーでもない現実的な設定に共感しまくっていました。僕は出番の多い役ではありませんでしたが、丁寧に演出して頂き、良いチームでした。

2022.03.04(金)
文=くれい響
写真=佐藤 亘
スタイリスト=カワサキ タカフミ
ヘアメイク=茂木美鈴