連続殺害事件、新興宗教、小屋に潜む“何か”……謎が謎を呼ぶ宗教ホラー

◆『サバハ』(2019年)

 次に紹介する『サバハ』は宗教を題材にした怪奇ミステリーホラーの傑作。不可解な新興宗教が絡んでいる怪事件の謎を追いかけるパク・ウンジェ牧師を演じるのは、世界的大ヒットとなった韓国ドラマ『イカゲーム』で主役を務めたイ・ジョンジェです。

 韓国で公開11日目に観客動員数200万人を突破するなど大ヒットとなった本作。無数の謎が散りばめられた難解な作品ゆえに、観客がパク牧師よろしく劇中の演出や登場人物、アイテムに込められた謎を紐解こうと何度も劇場通いつめたことがヒットにつながったそうです。

 醜い容姿で生まれ、悪鬼として育てられた双子女児の片割れ「クゴ(それ)」。新興宗教の不正暴露で生計を立てているパク牧師と謎の組織「鹿野苑」。そして女子中学生の殺人事件……。本作はこの三つの軸が交差していく構成です。

 また、本作では様々な宗教伝説を物語の展開に組み込んでおり、そこに気が付くのが謎を解く鍵となっています。とりわけ色濃いのが韓国でも信者の多いキリスト教のモチーフ。これを現代のアジアを舞台に描いたフレッシュさはさすが韓国映画界といったところでしょうか。

◎あらすじ

1999年に生まれた双子の女児。その片割れは悪鬼として小屋に閉じ込められた。時が過ぎ2014年。謎の女子中学生殺害事件で揺れる世間をよそに、新興宗教の不正を暴くパク・ウンジェ牧師は「鹿野苑」という宗教組織に目をつける……。

一触即発! 張りつめるような緊迫展開で魅せるポリティカルスリラー

◆『鋼鉄の雨』(2017年)

 次は、傑作政治スリラー映画『鋼鉄の雨』をご紹介します。主演は傑作と名高いノワール映画2017年の『アシュラ』で共演した、チョン・ウソンとクァク・ドウォンの名優コンビ。

 国の威信を守るため、自国の覇権を狙う中国との連携強化を進める北朝鮮の指導者暗殺を命じられた、北の元エリート工作員オム・チョルウ。そして、南の外交安保首席であるクァク・チョルウ。同じ名を持つ南北の男たちが偶然出会ったことで、物語は大きくうねりを見せていきます。

 朝鮮半島といえば、第二次世界大戦後、主権を巡って半島全域が争いの場となってしまった悲劇の国。今なお38度線で分断された土地でもあり、戦争状態が続いています。韓国国民にとって、いつまた戦闘が再び始まるとも限らない、という不安は身近なものなのでしょう。

 本作は、そんな不安がまさに顕現するのか否かの瀬戸際で、立場の違う男同士が命を賭して戦争を回避しようと足掻く緊迫の展開が最大の魅力。“厄災”に立ち向かう者たちを描いた政治スリラーという点で、“韓国版『シン・ゴジラ』”と称されることが多いのも納得の一作です。

◎あらすじ

北朝鮮で軍部によるクーデターが勃発。その場に居合わせた元エリート工作員のオム・チョルウは、とっさの判断で危篤状態の最高指導者を連れて韓国へ脱出するなかで、韓国の外交安保首席クァク・チョルウと出会う。鍵となる最高指導者を偶然手中に収めた二人は戦争回避のため奮戦してゆく……。

2022.01.27(木)
文=TND幽介〈A4studio〉