つかず、離れず、踏み込めず。さくらんぼはいつ実る?
『紅の豚』
「とにかくかっこいい。出てくるキャラクターがみんなかっこいい。93分と比較的短い映画だが、濃密なシーンばかりで、歌でいうとすべてサビみたいな映画。台詞がすべて印象的でパワーを持つものばかり。無駄を一切排除しているが、遊び心に溢れているように感じるのは、ものづくりにおける教科書のよう。いろんな空の色で、感情を表現しているのが省略の芸でありオシャレ。
高倉健の映画を観たあとに観客がみんな“高倉健”のようになっているように、豚の姿に変えられた主人公ポルコ・ロッソのようにみなユーモアに溢れ、責任感を持って自分がやるべきことをやり抜くというダンディズムを学び、私も成り切った。しかし、翌日、友だちに『なんか今日暗いね』と言われた」(瀧川鯉八さん)
青い空を自由に飛びまわる紅い飛行艇。宮崎駿の短編漫画を映画化した、一大航空活劇アニメーション。「飛ばねぇ豚はただの豚だ」「カッコイイとは、こういうことさ」と、空を飛ぶことへのこだわりと究極のダンディズムを披露した、スタジオジブリ劇場公開作品7作目。主題歌を歌う加藤登紀子が、ジーナの声も演じて話題に。
●あらすじ●
1920年代のイタリアのアドリア海。食い詰めた飛行艇乗りは空賊となって暴れまわり、彼らを相手に賞金稼ぎは功を競った。その中に、賞金稼ぎとして最も名を上げていた一匹の豚、ポルコ・ロッソ=紅の豚がいた。
古くからの知り合いでホテル・アドリアーノを経営する女性ジーナとはつかず離れずの関係。しかし、ジーナはこの関係をめぐってある賭けをしていた。それは、普段夜しか彼女の店にやってこないポルコが、日中庭にいるときに訪ねてきたら今度こそ……、というもの。果たしてその賭けは。
『紅の豚』
監督・原作・脚本:宮崎 駿
声の出演:森山周一郎、加藤登紀子、上條恒彦、岡村明美、大塚明夫ほか
1992年/日本/約93分
© 1992 Studio Ghibli・NN
Blu-ray 7,480円(税込) DVD 5,170円(税込)
発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン
映画を愛するレコメンダー
古牧ゆかり(こまき・ゆかり)さん
スタイリング/ビジュアルディレクター。ファッションやインテリアのスチールほか、ムービー制作のビジュアルディレクションなども手がける。https://www.yukari-komaki.com/
辻川幸一郎(つじかわ・こういちろう)さん
映像作家。日常にふと浮かび上がる妄想や幻覚を子どもの手遊び感覚で映像化する。MV、CM、ショートフィルムなど多岐にわたって活動中。
瀧川鯉八(たきがわ・こいはち)さん
落語家。2006年瀧川鯉昇に入門。新作落語の天才と注目され、20年真打昇進。アキ・カウリスマキ監督が好きで、フィンランドでロケ地巡りをした経験も。
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2021.11.06(土)
文=大嶋律子(Giraffe)
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