発売中の雑誌『CREA』2021年秋号「明日のためのエンタメリスト」より、「今なりたい気分」に寄り添う名作映画32選にて紹介しきれなかった作品を、秋の夜長にちょっとずつご紹介する第2弾!

 異色の登場人物が織りなす微妙な関係性。トキメキとはちょっぴり異なるラブストーリーはいかがでしょう。


“女性になりたい男”とその彼女が歩む愛の物語

『わたしはロランス』

「うまく表現できないですが、2人の再会シーンでの彼女の言葉に、たまらない感情が溢れてきます。どんなに愛し合っていても報われない、でもそれぞれの気持ちに嘘もつけない、切ないほどの葛藤……。もし彼の子を産んでいたらどうだったのか?

 周囲の偏見やジェンダーに対する社会的拒否反応も、今の時代ならもう少し楽に生きられるのかなど、胸がしめつけられます。美しすぎる映像(途中でスローモーションが入るシーンも好きです)と、音楽に引き込まれ、グザヴィエ・ドランの世界観に感動しました」(古牧ゆかりさん)

 トランスジェンダーをテーマにしながらも、普遍的な“愛の物語”に昇華させたグザヴィエ・ドラン監督。当時23歳という若さでこの作品を監督し、出世作となった鮮烈なラブストーリー。文学的な会話劇と写真集のような美しいカットの連続で、観る者を魅了する傑作。

●あらすじ●

カナダのモントリオールで国語教師をしているロランスは、恋人のフレッドと幸せに暮らしていた。ところが、ロランスは30歳の誕生日に、彼女に「これまでの自分は偽りだった。女になりたい」と打ち明ける。そこから10年にわたる強く美しく切ない2人の関係を描く。

『わたしはロランス』

監督・脚本:グザヴィエ・ドラン 
出演:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイほか
2012年/カナダ・フランス/168分
© 2012 Production Laurence INC / MK2 SA / ARTE France CINEMA
Blu-ray 5,280円(税込)
発売元:アップリンク 販売元:TCエンタテインメント

2021.11.06(土)
文=大嶋律子(Giraffe)