発売中の雑誌『CREA』2021年秋号「明日のためのエンタメリスト」より、「今なりたい気分」に寄り添う名作映画32選にて紹介しきれなかった作品を、秋の夜長にちょっとずつご紹介します。
第3弾は、独特だけどクセになる映像美に凝った傑作を集結!
奇想天外な大林ワールド満載! 伝説のカルトムービー
『HOUSE ハウス』
「少女たちが『家』にバリボリと貪り食べられていく映画なのですが、全部、最高の嘘でできている世界観で、わたしは大好きです。カットのつなぎ、台詞まわし、登場人物の名前、キャラ設定まで、すべてに笑いながらツッコミを入れたくなってしまいます(笑)。
目に焼きついているのは、ピアノの蓋が少女の指を噛みちぎるシーン、家が血の洪水で溢れて畳が浮き上がり、その上で少女が逃げ惑い全裸で暴れるシーンです。そして、すべての少女を食い尽くした朝、何ごともなかったかのような平和な家の画に、『今日からこの家に嫁いできませんか?』というゴダイゴのテーマ曲が流れるシーン。
わたしが女性だからかもしれませんが、女性が家に食われる、ということの業の深さのようなものさえ感じました」(吉開菜央さん)
大林宣彦監督の商業映画デビュー作。“家”が少女たちを食べてしまう不思議な世界観を持った、ファンタスティックホラー。画面合成による特撮、歯切れのいいカッティングが話題に。奇想天外なストーリーとポップアートのような映像は、いまも色褪せることなく、国内外でカルト的な注目を集めている。
●あらすじ●
中学生の少女オシャレは父から再婚相手を紹介され、そのショックで夏休みを田舎のおばちゃまのところで過ごすことに。紫色の森の中で古屋敷は少女たちを待っていた。ひとり暮らしのおばちゃまは、突然の訪問にもかかわらず、7人の少女を歓迎する。しかし、実はこのおばちゃま、数年前にすでに他界していた……。
『HOUSE ハウス〈東宝DVD名作セレクション〉』
監督・製作:大林宣彦
出演:池上季実子、大場久美子、松原愛、神保美喜、南田洋子、小林亜星、ゴダイゴほか
1977年/日本/88分
DVD 2,750円(税込)
発売元・販売元:東宝
2021.11.07(日)
文=大嶋律子(Giraffe)