発売中の雑誌『CREA』2021年秋号「明日のためのエンタメリスト」より、「今なりたい気分」に寄り添う名作映画32選にて、紹介しきれなかった作品を配信中。第4弾は家族のお話。

 複雑な関係や確執がありつつも、愛を描いた2作品をラインナップ。


絶交状態だった3兄弟が絆を深めていくインド珍道中

『ダージリン急行』

「ウェス・アンダーソンにしかつくれない少し不思議な世界へ連れていってくれる。旅をしたくなるというよりも、一緒に旅したい、むしろこの旅を永遠に眺めていたいという気分にさせてくれる1本。ウェス作品常連の俳優ばかりだが、その中でも名優ビル・マーレイの洗練された洒落たおじさんっぷりにはクラクラする。

 印象に残っているようで、実は何も覚えていないという映画かもしれない。すべてがワクワクして、次にどうなるんだろうという気もするが、大抵何にも起こらない。冒頭のスローモーションで列車に飛び乗るところから釘付けになる。どうしたらこんな洒落た演出・撮影が思いつくのか。そして音楽がいつも素敵。タランティーノと同じく、新しい音楽と昔の音楽を発掘、紹介してくれる監督」(瀧川鯉八さん)

 ポップなアート感覚でちょっと風変わりな家族の物語を描くウェス・アンダーソン監督。キュートなファッションアイテムや音楽を織り込みながら3兄弟が絆を取り戻すロード・ムービー。おとぎ話のような世界観でありながら、登場人物の心象風景がリアルで、とぼけた笑いと温かい感動に満ちた傑作。

●あらすじ●

長男フランシス、次男ピーター、三男ジャックのホイットマン3兄弟。彼らは長男の提案で、インド北西部を走るダージリン急行に乗り合わせる。旅の目的は、父の死をきっかけに心が離れてしまった兄弟の結束を取り戻すこと。それぞれに問題を抱える3兄弟は、顔を合わせて早々に衝突してしまうが……。

『ダージリン急行』

監督・脚本・製作:ウェス・アンダーソン
出演:オーウェン・ウィルソン、エイドリアン・ブロディ、ジェイソン・シュワルツマン、アンジェリカ・ヒューストンほか
2007年/アメリカ/92分
© 2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.
Blu-ray 2,096円(税込)/デジタル配信中
発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン

2021.11.08(月)
文=大嶋律子(Giraffe)