レインコートを着たフランシス・ベーコン:1967年撮影 Photograph by John Deakin

 日本では1983年以来30年ぶりとなるフランシス・ベーコン展。筆者としては喜びのあまり「手の舞い、足の踏む所を知らず」状態なのだが、何しろ国内で見るチャンスが少ないため(国内に所蔵されるのは5作品のみ)、ところによっては「ベーコン? (て誰だっけ)」という反応もある。そうした美術ファンにリーチするためか、展覧会のキャッチには「ピカソと並ぶ美の巨匠」とある。それがどこか不思議な感覚を呼び起こすのは、ピカソとベーコンがかなり長い同時代を生きた作家ではあるにもかかわらず(ピカソの生没年は1881年10月25日~1973年4月8日、ベーコンは1909年10月28日~1992年4月28日。むろん日本における2人の知名度は天と地ほどに違う)、立ち位置がまったく異なるせいかもしれない。ベーコン作品が、いまこの時代に生々しく迫って来る切実な感覚はどこから来るのか、絵と共に見ていこう。

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2013.04.27(土)