私にとっての「生きるための筋肉」

 筋トレの憎たらしいところは、やれば少しずつ結果がでるところ。これほど成果がわかりやすいものは、大人になるとそうそうない。続けていると、生活しやすくなるだけでなく、見た目も変わってくるから楽しい。どんどんハマる人がいるのは、やった分だけ成果が手に入るからだ。気付けば、健やかな自尊感情まで育っている。これよ、私がずっと求めていたものは!

 なりたい体のシェイプによってトレーニングも変わるので、ハマった人は理想の体の持ち主をインスタグラムで探すようになるだろう。iHerbでプロテインだけでなくEAA(必須アミノ酸)も買いだしたら、もう後戻りはできないかも。

 そこまで言うなら、よっぽどスタイルいいんでしょうねと思ったあなた。私のインスタグラムアカウントを見て欲しい。拍子抜けすること間違いなしだ。だって、普通だもの。

 でもね、これでいいの。自分が満足すれば、それでいいの。「私はやればできる」という自信と、踏ん張りが利くようになった実感があれば、それで。ちなみに、私が参考にしているのは海外のプラスサイズモデルたち。丸みを帯びながらもメリハリのついた豊満な肉体の持ち主たちは、誰もが筋トレに励んでいる。ただの過体重じゃ、プラスサイズモデルにはなれないのだ。

 さあ、ダイニングテーブルに肩幅より少し広く両手をつき、3歩離れたところから斜めの腕立て伏せをしてみて欲しい。胸がテーブルにつくギリギリまで体を傾けたとき、お尻が落ちて背中が弓のようにたわんでいないだろうか。いるとしたら、それは「生きるための筋肉」が足りない証拠。

 しゃがんだ姿勢から立ち上がれなくなる日は、残念ながら確実に来る。背中は丸まり、首が前に出てくる日もそう遠くない。でもその体、正しい筋トレをすれば、必ず変わるのだ。さあ、どうする?

ジェーン・スー

1973年、東京生まれの日本人。作詞家/ラジオパーソナリティ/コラムニスト。2015年、『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(幻冬舎)で第31回講談社エッセイ賞を受賞。近著に『これでもいいのだ』(中央公論新社)、『女のお悩み動物園』(小学館)など。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」(月~木、11:00~13:00)が放送中。またポッドキャスト「ジェーン・スーと堀井美香のOVER THE SUN」 を毎週金曜17:00に配信中。

2021.05.06(木)
Text=Jane Su
Illustrations=Kaoru Konagai

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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