自分の新しい一面を知ることができた『のぼる小寺さん』
――19年公開の『小さな恋のうた』では、沖縄の高校生バンドでベースを担当する大輝役を演じました。
サッカーで足を使うことには慣れていても、指を器用に使って楽器を演奏することは学生時代から苦手だったんです。それで初めて真剣に楽器に取り組みました。ずっと家でも練習していたり、とても不思議な感覚で楽しかったです。映画以外でも、ステージに立たせてもらったり、「ミュージックステーション」に出演させてもらったり、とてもレアな経験をしました。
――20年公開の『のぼる小寺さん』で演じた、未経験ながらボルダリング部に入部する陰キャの四条役も印象的でした。
ボルダリングは力技だと思っていたのですが、じつは身体の軸やバランスなどが大切な競技なんです。ボルダリング部のメンバーとは、レベルを競いながら演じていたのですが、四条はいちばん下手な役なので、滑って落ちてしまうカットなどは楽しんでやりました。性格が暗い役ですが、演じていくうちに、自分の新しい一面を知ることができましたし、意外としっくりくるかも? と思いました。
モテない、どん臭い男を演じた最新主演映画
――山田杏奈さんとW主演を務めた『ジオラマボーイ・パノラマガール』では、突然高校を辞めるケンイチを演じられました。
この役はオーディションだったので、決まって素直に嬉しかったです。でも、岡崎京子さんが描かれた原作を読んでも、人間味があるのに、本性を見せないケンイチのキャラがつかめなかったんです。シーンごとに見せる彼のまっすぐな気持ちをヒントにしながら、それを瀬田なつき監督と一緒に探っていくことが、今回の役作りのテーマだったと思います。
――同じ事務所に所属している山田杏奈さんとの共演はいかがでしたか?
『小さな恋のうた』では僕がバンドを辞めた後に、杏ちゃんが新たに入ってくる設定だったので、バンド練習以外、現場ではほとんど会っていないんです。それで、やっと一緒にお芝居できると楽しみにしていたのですが、今回もあまり一緒のシーンがないんです(笑)。完成版を観たときに、初めてお互いのシーンを知ることも少なくありませんでした。
――本作では、どのような新しい鈴木さんが観られると思いますか?
いつもカッコ良かったり、最終的にモテる役が多い中、まったくモテないどん臭い役は初めてだと思うんです。そういう意味でも、素の自分に近い部分が見られるかと思います。あそこまで変な奴ではないですが、重なる部分は多いですから(笑)。
モデルと役者、同一人物に見られなくてもいい
――今後の展望や目標を教えてください。
役者としては、家族を舞台にしたドラマに出演したり、よりナチュラルな芝居ができるような俳優になりたいです。具体的に憧れている俳優さんは思い浮かびませんが、松重豊さんが好きです。これからもモデルと役者、両方やっていきたいですし、同一人物に見られなくてもいいとも思っています。
鈴木仁(すずき・じん)
1999年7月22日生まれ。東京都出身。2016年、「第31回メンズノンノモデルオーディション」で準グランプリとなり、翌17年のドラマ「リバース」で俳優デビュー。その後、ドラマ「花のち晴れ~花男 Next Season~」「3年A組ー今から皆さんは、人質ですー」などに出演。FODにて、ドラマ「30禁 それは30歳未満お断りの恋。」が配信中。
『ジオラマボーイ・パノラマガール』
16歳の高校生・ハルコ(山田杏奈)は、ある夜、橋の上で倒れていたケンイチ(鈴木仁)に一目ぼれ。ハルコは世紀の恋だとはしゃぐが、真面目で寡黙なケンイチは、衝動的に学校を辞めてしまう。さらに、ケンイチは勢いでナンパした年上のマユミ(森田望智)に夢中になり、ハルコとケンイチの恋は平行線をたどる。
https://gbpg2020-movie.com/
©2020岡崎京子/「ジオラマボーイ・パノラマガール」製作委員会
Column
厳選「いい男」大図鑑
映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。
2020.11.06(金)
文=くれい響
撮影=平松市聖
ヘアメイク=KEIKO(Sublimation)
スタイリスト=森田晃嘉