LOVE:にしんそば
柏「竹やぶ」仕込みのわくわくがあるそば店

東白庵かりべ|神楽坂

飲めなくても飲みたくなる、日本酒にぴったりのおつまみがたくさん。こちらはえびの味噌焼き

 柏にあるそばの名店「竹やぶ」は一度だけ訪れたことがある。柏駅からバスだかタクシーに揺られてかなり行ったところにあって、とにかく遠かった。しかし、遠い分、文字通り竹やぶ、木立の中にある入り組んだ建物は随所にご主人・阿部孝雄さんの楽しい趣向が散りばめられていて、ひと目で好きになる空間。色とりどりのタイルがはめこまれた壁や、ご主人のちょっと笑えてためになる言葉を添えた絵画、かわいくてへんてこな置き物などなど、いるだけで愉快な気持ちになれるお店なのだ。

 そしてお目当てのそばはというと、取材で試食をさせていただき、さらに「せっかく来たのだからゆっくりしていこう!」と、カメラマンと共に企んだものの、大のおとなが有り金を全部合わせても2000円足らずしかなく、素敵な空間でリアル「一杯のかけそば」状態になってしまったのは良い思い出だ。それはさておき、その来訪はもう随分前になるのだけれど、そのときは新そばの季節で、「そばというのはこんなにいい香りがするものなのか!」と膝を打つほどだったのを覚えている。

 さて、本題。神楽坂の「東白庵 かりべ」はそんな「竹やぶ」出身のご主人がやっているおそば屋さん。現在はないが、六本木ヒルズのお店を任されていたそう。やはり取材でこちらを初めて訪れたときに「はっ!」となった。「なんだか来たことがあるような気がする。しかも、大好きな感じ!」と思ったのは、どうやら楽しかった「竹やぶ」での思い出が呼び起こされていたようだ。すぐに壁に飾られた「竹やぶ」店主の書を見て理解した。聞けば施工も阿部さんのご紹介だそうで、壁にいろんなものがはめ込まれたり、「竹やぶ」イズムが! 六本木ヒルズのお店から持ってきたという椅子も応接間みたいでいい! もう、良い予感でいっぱいである。

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2013.03.29(金)