LOVE:毛蟹大根鍋
蟹をむく甲斐もある味噌バターだし

牧野|稲荷町

白味噌でコトコト煮られる鍋。蟹が白くなったら食べ頃。随分大きな毛蟹だ

 鍋は好きなので興味があるものを見つけては食べに行くが、今シーズン印象深かったのが「牧野」の毛蟹大根鍋だ。ときどきお寿司を一緒に食べに行く知人に「おいしい鍋の話を聞いたんだけど、行かない?」と誘われたのはいつのことだったか。「なになに、どんな鍋?」「蟹でねー」「うん」「味噌でねー」「うん」「大根でねー」「うんうん」「バターが入ってるんだって」「きゃー、なにそれ食べたい、行く行く!!」

 ようはバターが出てくるまではそんなにそそられてなかったのですね。でも、バターって! 蟹と味噌と大根と、バターって!!

 なんだかんだ日がたってしまったが、冬の寒い夜に「毛蟹大根鍋」を決行。しかし、それまでが長かった、面倒くさかった。そもそも、蟹ならなんでも好きというテンションではない。むかなくちゃならないのが面倒かも、と思っているメンバーがふたり。そのうちひとりは自分。私の場合は、普通に出てくる蟹ならむいて食べるのも苦じゃないのだが、あっつい鍋の汁に入っている蟹を手で取り出してむくのがちょっと……というケース。もうひとりは果物でもなんでも「誰かむいてくれないか」と思っている王様体質。

 さらに、誘った人の中には「蟹でもなんでもきれーいに食べないと気が済まない」体質をこじらせて、他人が雑に食べるのを見るのがつらいから蟹は好きだけど食べたくない、という最高にややこしい人まで……欠席だった。幹事には「蟹はむかれているのか」という問い合わせが殺到。そこまでコトを重大視してなかった幹事が「むいてあるんじゃないの~」と気軽に答えると、「それは本当なのか」「画像検索をかけると殻がたくさん写っているが」……じゃあもうお店に電話しなよ! という面倒くささなのであった。

 さて当日。結局「むいてはいないが、食べやすく切り目が入っている」との結論のもとに集合した6名。ほっとひと安心である。今日は鍋に集中! ということで、おつまみ関係は控えめに。早々と鍋の登場となる。

 なんといってもテンションが上がるのは、バター! まるでホットケーキのとろけ具合で登場する。鍋にはぎっしりの毛蟹と薄めの乱切りにした大根がコトコトと煮られている。なんだか独特の世界観だ。

 蟹もおいしいんだけれど、やっぱりだしがおいしい。それがしみた大根もおいしい。そして意外なほど唐辛子が入っていて、ちょっぴり辛いのがポイントになっているようだ。この唐辛子のおかげでバターの風味がだらしなくならない感じ。シンプルなようで奥深い話である。口もきかずに蟹をほじくり、大根をハフハフし、汁をじゅるじゅる。大根が抱え込んでいるアツアツパワーが体中にしみわたり、体が芯から温まるのが快感である。

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2013.02.12(火)