フランスの庶民に愛されている、素朴なパンや伝統菓子を作りたい

 そして、フランスのパン屋さんに必ず置いてあるお菓子が、さりげなく並んでいるのです。

「タルト・オ・ポム」500円

「タルト・オ・ポム」リンゴのタルトは定番中の定番。佐藤さんは、フランスのパン屋さんに研修に入って「毎日、リンゴを3箱分むいてスライスし、それができたら並べていたんです。だから、日本に帰ったら、絶対に作ろうと思って(笑)」。見た目は大輪の花のよう。アーモンドクリームを塗った塩味のタルト生地の上に、薄くスライスしたリンゴが丸々1個分のっています。食べると歯触りが良くてジューシー。リンゴのおいしさを堪能できます。香り高い紅茶やシードル(リンゴを使ったお酒)と一緒に楽しみたい一品。

「パン・デピス」量り売りは50g180円、スライス1切180円

 もうひとつ、佐藤さんが絶対に作りたかったのが「パン・デピス」。「フランスではどのパン屋さんにも必ずあるポピュラーなお菓子。それをぜひ紹介したかった。初めて食べる方やスパイスが苦手な方でもおいしいと思ってもらえるようにレシピを工夫しました」。アニスパウダー、シナモンパウダー、キャトルエピス(4種類のスパイス)などをブレンドして、スパイスが程よく香る食べやすい味に仕上げています。50g180円でブロックで買うこともでき、手土産としても好評。「温めてアイスクリームやヨーグルトを添えてもいいですよ」。口の中で色々なスパイスの香りが広がる印象的なお菓子。赤ワインとも合います。

奥から時計回りに、「ミルリトン・バナーヌ」260円、「ミルリトン・フランボワーズ」300円、「ミルリトン・ショコラ」260円

「ミルリトン」はフランス・ノルマンディ地方、ルーアンの郷土菓子。アーモンドと卵、生クリームを使った素朴なタルトです。「シンプルでいて奥深い味わいのある、とってもフランス的なお菓子だと思います。色々な地方でそれぞれの土地の特産品を使ったアパレイユ(混合生地)で作られていて、おもしろいんですよ」。パリではオレンジの香り、南仏ではクルミ入り、と様々なバリエーションがあるそうです。

 佐藤さんは「自分らしいものを作りたい」と生クリームを使わず、原乳の風味が濃い北海道のバターを溶かしバターにして、卵とアーモンドパウダーに混ぜたアパレイユに。また、ベースはパイ生地が定番ですが、バター、粉糖、卵黄、小麦粉を使ったシュクレ生地にしています。そんな独自の工夫をして「まだ、あまり馴染みのないミルリトンを、たくさんの人に好きになってほしいんです」とにっこり。酸味がきいた自家製の木イチゴのジャムを入れたもの、ほろ苦くて甘いバナナのキャラメリゼを入れたもの、チョコレートを混ぜたアーモンドクリーム入りなど、様々な味のものを作っています。小ぶりで軽い食感のシンプルなお菓子はコーヒーと楽しみたい。

「クロワッサン・アマンド」220円

 アーモンドのクロワッサン「クロワッサン・アマンド」は、サクサクのクロワッサンを焼き上げ、わざとぺちゃんこにして、たっぷりのアーモンドクリームのコクとまろやかさで楽しむお菓子。アーモンドクリームの味、量、はさみ方、かぶせ方でお店毎に味が変わります。パンとお菓子の中間のような存在といえるでしょう。佐藤さんは、シナモンをきかせ、オレンジ風味のシロップで香り付け。エスプレッソにぴったりです。

「フランスの庶民に愛されている、素朴なパンや伝統菓子に魅かれます。それらを自分なりに工夫して作り続けていきたい」と佐藤さん。フランスさながらのパン屋さんで、フランス気分にひたれるおやつをいっぱい買って帰るのはとても楽しい。店内ではイートインもOK。気軽にワインやコーヒーを飲みながらパンやお惣菜が食べられます。

プラス・ドゥ・パスト (Place de Pasto)
住所 兵庫県神戸市中央区橘通3-1-1 西門ビル1階
電話番号 078-371-3403

宗田洋子(そおだ よおこ)
ライター。神戸生まれの神戸育ち。神戸を離れたことがない神戸っ子。ライター歴30年以上で、関西の雑誌の取材だけでなく全国誌でも関西取材を手がけ、老舗から新店まで回ったお店は数知れず。移り変わる街を見続けてきた。食いしん坊で飲んべえ。

Column

そおだよおこの関西おいしい、おやつ紀行

生まれも育ちも神戸の生粋の神戸っ子で、長年の関西での取材経験からおいしいお店を知り尽くしている、ライターのそおだよおこさんが、関西の「今、食べてほしい!」というおやつを紹介します。

2013.02.24(日)