格子戸に古い茶箪笥、裸電球が下がり、壁には手書きの張り紙と、レトロなムードの店先。ケースに並んでいるのは、いろいろなおはぎが8種類。

 阪急・宝塚線の岡町駅からアーケードの商店街を抜けた所にある小さなお店には、近隣の常連客が次々に訪れて、1個2個とその日に食べるおはぎを買い求めていきます。店名は「森のおはぎ」。森百合子さんが2010年に始めた、おはぎ専門店です。「そのまんまの店名でしょう」と森さんはにっこり。

 お店がある岡町には、7世紀後半、天武天皇の時代に創建されたといわれる原田神社があり、その門前町で能勢街道と伊丹街道の交わる地点として栄えてきたのが岡町商店街。今もたくさんの人が行き交い、お買い物をする活気のある商店街です。

「元々、おはぎが大好きでした。おばあちゃんが作ってくれた、どこか懐かしい味のおはぎです。デパートで売られているものを買って帰って食べても、どこか違うんですよね」と、森さん。「テキスタイルデザイナーとして働いていましたが、もっとお客様と近い仕事を、と食べ物を作ることに方向転換。飽きられずにずっと食べたくなるものを、きちんと手作りしたいと、色々考えて」、おはぎを作り始めたのだそうです。

左から「くるみ 黒米もち」179円、「大納言 雑穀もち」126円、「深炒きなこ 雑穀もち」126円

 森さんは、まず独学でおはぎ作りを始めました。種類はあんこときなこだけ。「餡を炊くのが難しいんです。同じ砂糖の量で炊いても、火加減であっさりになったり、甘ったるくなったりする。なかなか自分が思うような、あっさりした味に仕上がらなかった」。それを和菓子のプロから教わってクリアします。「そのうち、誰も食べたことのないもの、見たことのないものを作ってみたくなりました」。

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2013.02.10(日)