数年前に「白い鯛焼」がブームになりましたね。街のあちこちに鯛焼屋ができていましたが、いつのまにかなくなっています。ねっとりした皮のカスタードクリームやチョコレートの鯛焼はあまり好きではなかったのですが、鯛焼のお店がたくさんできて、ちょっとうれしかった。そう思うほどもともと鯛焼屋が少ない関西で、わざわざ出かけて行ってでも鯛焼を買いたいお店が、兵庫県加古川市にあります。
加古川市は、兵庫県南部の播磨灘に面した街。名前のとおり、加古川がゆったりと流れています。かつては播磨工業地帯として栄えましたが、今はすっかり神戸や大阪のベッドタウン。「播磨の法隆寺」とも呼ばれる鶴林寺や、宿場町の面影が残る寺家(じけ)町周辺を散策すると、歴史に浸ることができるでしょう。最近ではB級グルメの「かつめし」が話題です。
お店はJR加古川駅から歩いて約2分。赤色の鯛の立て看板が見えてくると、香ばしい香りも漂ってきます。持ち帰り専門の小さなお店。ご主人・多加茂さんが鯛焼を黙々と焼き続けています。手土産に10匹、20匹とまとめ買いする客や、「今日は2匹。縁を付けておいて」と買って帰るお店の近所の常連客が次々に。行列のできる鯛焼屋さんとして、地元ではすっかり有名です。
オープンは平成15年。多加さんはもともと和菓子が好きで、休日にあんこを炊いてどらやきや鯛焼を作るのが趣味でした。脱サラして和菓子屋をしたいと思ったのですが、49歳では修業もできません。それで、鯛焼の専門店をしようと決めたそうです。だから、すべてが独学。「おいしい鯛焼屋があると聞けば、各地へ出かけて食べ歩きました」と多加さんはにっこり。60店舗以上の鯛焼を食べ歩いたと言います。
2012.12.16(日)