「スイスでは、クリスマスに赤いマントのサンタクロースと一緒に、黒っぽい衣装のシュムッリが登場します。サンタクロースはズダ袋に入ったクリスマスのクッキーやピーナッツ、ミカン、チョコレートを子どもに配るのですが、シュムッリは、悪い子どもをズダ袋に入れて連れていく。だから、子どもたちにとって、クリスマスはうれしいけれど、ちょっと恐い日でもあるんです」

店主のピーター・ラパートさん

 そう語るスイス人、ピーター・ラパートさんが東大阪市に洋菓子店「コンフィセリー ラパート」を開いたのは2003年。ピーターさんの故郷は、スイスの東端ボーデン湖の畔にあるMuensterlingen。15歳の頃には、お菓子職人だった父親と一緒にチョコレートを作り、19歳からはドイツ人の職人の元でお菓子作りを学んだといいます。

「コンフィセリー ラパート」の外観

 お店の最寄りは、近鉄奈良線の瓢簞山駅。駅から南北に伸びている通りは高野山へ参詣する高野七道のひとつ、東高野街道として古くから人々が往来した道です。駅の南の瓢箪山稲荷神社は日本三稲荷のひとつで、辻占総本社。その神社がある丘が瓢箪の形をしている瓢箪山古墳で、それが地名の由来なのだそう。生駒山が間近に見える、活気ある住宅街です。

「ドライ・ケーニグス・クーヘン」 2013年1月5日、6日のみ販売 価格未定

 ピーターさんが「試作中ですが」と焼いていたのは、1月6日「ドライ・ケーニゲの日」にスイスで焼かれる特別なパン「ドライ・ケーニグス・クーヘン」。東方から3人の賢者がベツレヘムを訪れてキリスト生誕を祝ったとされるのが1月6日。クリスチャンにとってクリスマスよりも大切な日だそうです。スイスでは賢者が王様になっていて、ミニチュアの王様が入った一片を食べた人は、その日1日、紙の王冠をかぶって王様になれるのだとか。フランスの伝統菓子「ガレット・デ・ロワ」みたいですね。上にはスライスアーモンドが散らしてあり、レーズンとレモンピールが入っています。「まだ、王冠を用意していません」とピーターさんは残念そう。ふんわりしていて、甘味もあって、食べやすいパンでした。

「スイスでは、12月に家族でクッキーを作ります。動物の形のもの、星形のシナモンのクッキー、サブレやラズベリージャムをサンドしたシュピッツプエブリなど、たくさん作って大きな缶に入れておいて、12月中ずっと食べるんですよ」

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2012.11.25(日)