小さい頃、家で母が作ってくれたおやつといえば、ホットケーキかドーナッツでした。ドーナッツは、今のようなドーナッツメーカーもなかったので、粉をこねて手で伸ばし、棒状にして端っこをつないでいましたっけ。それを油で揚げ、グラニュー糖をまぶしてできあがり。できたてのドーナッツは、ふんわりして優しくて甘い、とびきりのおやつでした。
そんな家庭の味とは違う、パン屋さんのドーナッツも実は大好きなんです。なかでも一番のお気に入りは、私が中学生の頃から通っているパン屋さん「フロイン堂」のもの。それは、穴の開いていない「アンドーナッツ」です。
お店がある岡本は神戸市東部の閑静な住宅街。学生街でもあり、小さな雑貨屋さんやカフェ、スイーツのお店が点在していて、それらをお目当てに街巡りを楽しむ人も多いんですよ。
「アンドーナッツ」は食パンの生地を使っているから、初めて食べた人はびっくりするくらいの強い歯ごたえがあります。噛むうちにパン生地の旨味があんこの甘さと合わさっていくのがいい。もぐもぐ、しっかり噛んで味わうドーナッツです。昨今、ふわふわ、さくさくのドーナッツが多いけれど、私は断然、パン屋さんのむっちりドーナッツが好み。1個で「食べた感」があって、満足できます。
このフロイン堂さんに、5、6年前から登場したのが「ぶどうドーナッツ」。こちらはバターが入った「ぶどうパン」の生地を使っていて、それこそ、家で母が作ってくれていたドーナッツみたいな手作りならではの形なんです。表面のあちこちにレーズンの粒がのぞいていて楽しい。手でちぎると、生地にはレーズンがいっぱい使ってあるのがわかります。これも、もっちりした食感で噛む程に味が出ておいしい。
どちらも表面にシナモンシュガーがかかっているのが特徴。そのシナモンの香りが食欲をそそります。あんことも、レーズンともとても相性がいいんです。家でゆっくり味わう時は、しっかりした味わいの紅茶と。私はよく中国や台湾の紅茶なども合わせて楽しんでいます。
このドーナッツ2種類、パン生地で作るので、成型して油で揚げるタイミングが難しいのだそうです。どちらも毎日30個から40個しか作られていません。11時半くらいにお店に並んで売り切れたらおしまい。取り置きしてもらって買いに行くのがいいでしょう。
2012.10.28(日)