●ナチュラルに演じることができた初出演映画

――初めての撮影現場、演技はいかがでしたか? また、サッカー部の業平役を演じるうえでの難しさは?

 普段はいつも同じメンバーと同じスタッフとやっているので、違う世界に放り込まれて、いろんな方とお会いすることに緊張しました。みなさんが話しかけてくださったので、徐々に馴染んでいきましたね。

 人間的にも環境的にも業平に共感できるところも多かったので、役を作り込むというようなことはなく、ナチュラルにやることができました。最初は、監督に「セリフが読めてない」と怒られてばかりでしたが……(笑)。

――完成した作品をご覧になったときの感想は?

 バンドのライブ映像を観るときと違って、セリフも言っているし、自分が作品の中にいること自体、不思議な感覚でした。「これをみんなが観るのか?」と考えると、ちょっと照れくさいですね。

 でも、深夜のショッピングモールでの撮影など、なかなかできない経験もさせてもらい、とにかく楽しかった思い出が甦ってきました。

――今年二十歳を迎え、今後はどのようなアーティストを目指していきたいですか?

 とにかくバンドを頑張って、将来的にどの会場でやりたいというより、自分が納得のいく、「このためにやっていたんだ」と、胸を張って言えるような作品を残したいです。

 正直な話、今はライブをする、というよりは、音源を作る方に気持ちが傾いているところもあります。役者の方は、今後もしお話をいただけるようであれば是非という感じです。

小室ぺい(おむろ ぺい)

2000年1月12日生まれ。神奈川県出身。16年、メンバー全員が高校生のロックバンド・NITRODAYを結成。ボーカル・ギターを担当するなか、すべての楽曲の作詞・作曲も担当。ふくだももこ監督の熱烈なオファーにより、本作が俳優初挑戦となる。

『君が世界のはじまり』

大阪の端っこのとある町。深夜の住宅地で、中年の男が殺害される。犯人は高校生だった。この町に住む高校2年生の縁(松本穂香)は、彼氏を次々変える親友の琴子(中田青渚)と退屈な日々を送っていたが、琴子は彼女に憧れるサッカー部主将・岡田(甲斐翔真)がいるなか、同じサッカー部の業平(小室ぺい)に一目ぼれしたことで、2人はすれ違うようになる。同じ高校に通う純(片山友希)は、母が家を出ていったことを無視し続ける父親に何も言えぬまま、放課後ショッピングモールで時間をつぶす。ブルーハーツを聴きながらふと通りかかった屋上で、東京から転校してきた伊尾(金子大地)と会い、求めるものもわからぬまま体を重ねるようになっていき……。そんなある朝、父親殺しの犯人が逮捕され……。郊外の気怠い空気とそれぞれの感情が混じり合い、物語は疾走していく。
https://kimiseka-movie.jp/
7月31日(金)より全国公開中。
(C)2020『君が世界のはじまり』製作委員会

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2020.07.31(金)
文=くれい響
撮影=平松市聖